後藤允良税理士事務所 > 税務に関する記事一覧 > 定款の作成方法とは?作成時における注意点と会社設立後の変更について
会社を設立するなら「定款」を作成しなければなりません。単なる会社のルールとして機能するだけでなく、その記載内容によって会社の形態が決まりますし、なによりこれを欠いて会社設立することは不可能だからです。
そこでこの記事では、会社設立をする場合どのようにして定款を作成することになるのか、どのような要件があるのか、といった内容を解説します。
有効に会社設立をするためには、定款作成にあたってすべきこと、記載すべきことがいくつかあります。以下の要点を抑えておきましょう。
定款の記載事項として特に重要な「絶対的記載事項」というものがあります。
例えば会社の「目的」や「商号」、「本店所在地」、「設立時に出資される財産の価額またはその最低額」「発起人の氏名または名称および住所」です。
これら絶対的記載事項を欠いた定款は効力をなしません。
特に「設立時に出資される財産の価額またはその最低額」と「発起人の氏名または名称および住所」に関しては、設立時にのみ考慮する事項です。
また「発行可能株式総数」についても定める必要がありますが、これは原始定款作成の段階で定められている必要はありません。なぜなら、設立過程で株式の引受けや失権の状況が変わることがあるからです。状況を見つつ、適切な数を定めたほうが良いという理由です。
そこで、最低限、会社設立が完了する時までに定款に記載されていれば良いとされています。
法改正によって徐々に柔軟化されており、会社設立の自由度は高まりつつあります。例えば公告方法に関してもかつては絶対的記載事項とされていましたが、今では相対的記載事項として、必ずしも定めを置く必要はなくなっています(定めなければ「官報」が公告方法になる)。
なお、「定時株主総会の開催月」「事業年度の定め」などは任意的記載事項であり、定款への記載がなくても問題はありません。
株主総会や取締役、監査役といった機関の設計も行います。
といっても発起人が完全に好き勝手設計できるものではなく、会社法に背かない範囲で設計していくことになります。例えば株主総会を設けないことはできませんし、取締役がいない株式会社も存在しません。
よくある例としては、以下の機関を設けた会社です。
会社の規模を考慮して、専門家の意見も取り入れつつ検討することが大事です。
適切な形で定款の中身が作られたとして、その定款に対しては「発起人の全員の署名」または「発起人全員の記名押印」がなければなりません。
必要な事項を記載し、発起人による署名等が付された定款は、公証人による「認証」を受けることでようやく効力を生じます。
そこで、会社の本店所在地を管轄する法務局(または地方法務局)にて、公証人の認証を受けましょう。
定款の中身は会社によって様々です。
しかし実際のところ、共通している項目も多いです。
特に上場企業では公開準備に伴い定款の見直しを行うことになり、上場の要件を満たすように見直されるため、似たような形となっているケースが多いです。
各証券代行機関は全国株懇連合会の雛型を参考にモデル定款を作成する例が多いため、参考にする場合は全国株懇連合会の雛型を確認してみると良いでしょう。
また、近年の定款はボリュームが縮小する傾向にあります。
株式の取扱いなどの事務的な事柄、取締役会の運営など自治の問題などは定款に定めず、「株式取扱規則」「取締役会規則」に委ねるケースが多いです。
※株式取扱規程:定款からの授権に基づき、株主権行使に関することなどをまとめたもの
※取締役会規則:招集権の定め、開催の頻度など、取締役会に関するルールを成文化したもの
株主総会、取締役および取締役会、監査役から構成される株式会社の場合、通常、以下のように定款が章立てされます。
ただし、「大会社かどうか」「公開会社かどうか」によって章立てや内容が大きく変わります。
例えば、大会社かつ公開会社であれば、総則の章において取締役会と監査役に加え監査役会と会計監査人を置く旨規定します。
大会社かつ非公開会社でも基本的な部分は同じですが、株式に関する、単元株式・単元未満株主の権利・株主名簿管理人・振替制度などの事項は大きく異なります。公開会社に比べて株主の移動が少ないという前提があるからです。
他方で、大多数を占める株式会社は中小会社かつ非公開会社です。
このとき、監査役の権限を会計に関するものに限定することも考えられます。ただしこの場合、取締役に対し、取締役の同意または取締役会決議による責任刑減の制度が適用されなくなることには注意が必要です。
定款は会社設立後に変更することも可能です。そのため事業の進捗に合わせ、変動することを見越した定款の内容にすることも可能です。
ただし、定款の変更は簡単にできることではないため要注意です。
まず、原則として定款変更では「株主総会での特別決議」を経る必要があることは理解しておきましょう。
普通決議であれば株主の半数ほどから同意が得られていれば足りるところ、特別決議の場合には2/3以上の同意が必要です(厳密な要件は要確認)。
そのため後から変更をしようと考えても、もはや発起人の考えだけで変更することはできないのです。
また、定款変更には株主の意思を反映させることが重要であるため、株主総会以外の機関や第三者に定款変更を委任することもできません。具体的内容まで株主総会で決める必要があり、「大枠のみを株主総会で決め、細目は取締役会に委任する」といったことも通常認められません。
基本的には定款変更手続きとして特別決議が必要ですが、例外もあります。
変更する内容に応じて、さらに厳格な要件が求められることもあれば、逆に株主総会決議が不要なケースもあるのです。
例えば、定款の記載方法を横書きから縦書きに変更するだけであれば「形式的意義の定款変更」として、株主総会は不要です。
しかしながら、条文の配列、句読点の打ち方、使用する漢字、送り仮名の変更など、字句の変更を行う場合には「実質的意義の定款変更」にあたる可能性があり、そうすると株主総会を省略することはできません。字句の変更に対しどのように扱うべきなのかは判断が難しいです。
任意的記載事項はもちろん、原則として絶対的記載事項や相対的記載事項などいずれも自由に変更することができます。
ただし、強行法規や公序良俗に背く内容は無効ですし、株式会社の本質に適合しない内容、株主平等原則に反する内容も無効になると考えられています。
そのため、法令上特定事項につき変更が禁止されている旨明記されていなくても、すべてが自由に記載できるわけではない点注意しましょう。
なお、過去には「取締役等の資格を日本国籍保持者に限る」旨の定款を有効と判断した判例があります。私法的自治の範疇であり公序良俗に反しない、外国人に対する不合理で差別的な取扱いでもないと判示されたのです。ただ、これは昭和46年における判例であり、現代のグローバルな環境下にまで絶対的に適用される規範とまでは言い切れません。
この判例のみならず、過去の事例を参考にしてグレーな事項を定めても、判例が変更される可能性はありますのでこの点も注意が必要でしょう。
ここで説明した通り、定款にも相場がありますので、書き方で悩んでいる方は他社の定款やひな形を参考にしてみると良いでしょう。
その際は、自社の機関設計に合ったものとすること、また将来起こり得る定款変更の可能性にも意識を向けることが大切です。
困ったときには、会社設立に強い専門家への相談をおすすめします。