後藤允良税理士事務所 > 税務に関する記事一覧 > 決算の流れ・スケジュールや業務のポイントについて
経理業務1年間の総まとめが「決算」です。自社の財産状況、利益の状況などをまとめるだけでなく、貸借対照表や損益計算書には役員や株主、さらには銀行や一般投資家などさまざまな利害関係者が注目しています。
これらの書類を作成するとても重要な業務について、大まかな流れやスケジュールをここで紹介し、業務を遂行するうえで重要なポイントについても解説していきます。
1年間処理してきた取引を集計し、会社の経営成績や財政状況をまとめていく作業が決算です。
具体的には「貸借対照表」と「損益計算書」などの決算書を作成していくことになります。※ほかには、「株主資本等変動計算書」「キャッシュフロー計算書」などの決算書もある。
この決算書を作成する目的は、第一に「株主への報告」にあります。
同族経営など小規模の会社であれば株主が経営者を兼ねていることも多く、株主兼経営者の方であれば内情をよく知っていますのであまり報告として行う必要性はないでしょう。しかし、外部から直接経営には参画しない株主が加わることもあり、そのような内情をあまり知らない株主からすると、決算書は会社の状況を把握する大事なツールとして機能しているのです。
また、会社と取引を行う他社や銀行なども決算書をチェックすることがあります。大きな契約を交わすときは利害を共にしますので、倒産などのリスクを受けないよう決算書を見て会社状況を調べておくのです。
決算といっても普段の処理と独立した業務ではありません。結局は日々の仕訳の積み重ねにより決算書が完成に近づいていきますので、①日々の仕訳、②月次決算、③決算整理、という流れで決算書が作成されます。
なお、今では会計ソフトを利用するのが一般的ですので、一つひとつの書類をすべて作成していく手間は発生しません。毎日の仕訳を行うことで当月における試算表まで自動的に作成されていきます。
もし決算日が3月31日とすれば、決算業務のスケジュールはおおむね次のようにまとめることができます。
※1 減価償却、経過勘定の計上、売上原価の算定、引当金の計上 などを行う。
※2 原則として決算日から2ヶ月以内に行う。
決算業務に取り組むときは、以下のポイントを押さえておくと良いでしょう。
また、決算業務は税務申告と密接に関係しています。決算書の内容は税務申告の基礎となりますし、税理士とも連携して税務上の注意点や節税対策などを確認しておくと良いです。
決算業務を効率的に進めるうえで重要なことは、次のようにまとめられます。
決算業務を効率化するために大事なこと | |
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業務フローの標準化やマニュアル作成 | 業務フローを標準化し、各ステップでどの担当者が・何を・いつまでにやらないといけないのかを明確にする。これにより作業の重複や漏れを防ぎ、効率的な連携を図る。 また、マニュアルの作成など形に残しておくことで担当者の異動や新人の参加にも対応しやすくなる。 |
領収書などの電子化 | 請求書や領収書などの証憑類は電子化することも認められている。電子データとして保管することで、検索や参照も容易になり紛失のリスクも軽減される。クラウドストレージを活用すれば関係者間での情報共有もスムーズになるため、効率化の観点からは電子化への対応がとても効果的。 |
ITツールの活用 | 電子化するだけでなく、そのデータをより扱いやすくするためのITツールを導入すると良い。 会計ソフトはもちろん、ERPのような基幹システムも導入してデータ利活用を図れば、決算以外の分野にもその情報を活かせる。 |
担当者間の情報共有 | 決算業務は経理担当者だけでなく、営業や総務など他部署との連携が必要となる場面も多い。その連携をスムーズにするため、チャットツールやグループウェアなども活用し、コミュニケーションを円滑にすることが重要。 顧問税理士がいる場合、その税理士との連携が取りやすくなるような体制を整えるのも大事。 |
定期的な見直しと改善 | 業務フローやITツールの活用状況、担当者間の連携など、決算業務に関わるさまざまな要素を定期的に見直し、改善していくことが重要。 状況を見返すことで業務のボトルネックが特定できるようになり、更なる効率化を実現できる。 |
作成された決算書は、株主総会または取締役会へ提出し、そこで承認を受けます。その後は官報などに掲載しますので、世に公開されることとなります。
※よくある非上場の中小企業であれば貸借対照表のみ。資本金5億円以上または負債200億円以上のいずれかを満たす大会社なら貸借対照表と損益計算書を公開する。
なお、合同会社においてはこの決算公告の義務がありません。