起業する際には、起業の知識を持った専門家に支援を依頼すると安心です。
とくに金銭面のアドバイスは、起業後の経営にも欠かせません。
この記事では、税理士に起業支援を依頼するメリットについて解説します。
会社を設立する段階から税理士に支援を依頼することで、さまざまなサポートを受けられます。
とくに起業時には、決めなければいけないことや提出しなければいけない書類が多くなります。
税理士の支援を受けることで、必要な手続きを漏れなく行えます。
起業時には、資本金の額や決算月などを決定しなければいけません。
資本金は会社の体力でもあり、信用力を示す指針にもなります。
深く考えずに決定してしまうと、他社から信用を得られなかったり、銀行から融資を受けにくくなったりする恐れがあります。
起業時にはとくに資本金の額が対外的な信用の指標となるため、金額の決定は適切に行わなければいけません。
また、会計期間を区切る決算月の決定も重要です。
たとえば消費税は、条件を満たすことで設立から2期目まで免除されます。
会社の設立日から決算月までの期間をできるだけ長くすることで、その恩恵を多く受けられ、節税につながります。
そのほか、法人税や消費税は事業年度終了日の翌日から2月以内に納税することが定められています。
法人税や消費税の納税額は高額になることもあり、事業の繁忙期や手持ち資金が増える時期との兼ね合いで決算月を決定した方が良い場合もあります。
税理士に相談することで、自社にとって最適な時期を選べます。
起業時には税務署へ必要書類を提出しなければいけません。
個人で起業する場合には、主に次のような書類の提出が必要です。
税理士であれば申請書の作成や申請を支援できます。
また、法人の設立時には次のような書類の提出が必要です。
提出する書類の種類が多く、書類ごとに提出期限も違うため、税理士のサポートを受けながら届け出を行うと安心です。
会社設立時は信用力が低いため、銀行から融資を受けることが簡単ではありません。
このような時期には、国や地方自治体が設けた創業融資の制度を活用すると良いでしょう。
創業融資を受けるには、自社の条件に合った制度を探したり、審査書類を用意したりする必要があります。
税理士に相談することで、さまざまな融資制度の中から自社に適した制度を選ぶことや、適切な書類を作成することが可能です。
融資を受けるためには、説得力のある事業計画書の提出が必要不可欠です。
事業計画書とは、事業目的や見通し、収益予測などを記載した書類です。
非現実的な内容が書かれていたり、見通しが甘かったりする場合には、融資の審査に通らない恐れもあります。
しかし税理士であれば、資金繰りや収益について専門的な立場から予測を立てることが可能です。
税理士の作成した事業計画書や返済計画は信用力も高く、融資を受けやすくなります。
国や公共団体などが補助金や助成金の給付を行うことがあります。
条件ごとにさまざまな制度があり、自社に適した補助金などを見つけることは簡単ではありません。
しかし税理士は補助金などの情報に精通しており、適切な情報を提供できます。
設備投資を行う際に活用できる助成金などもあります。
税理士に依頼しておくことで、起業時に活用できる制度の情報を得られます。
起業時から税理士へ依頼しておくことで、その後も継続して依頼できることもメリットのひとつです。
事業が始まってからも資金調達が必要になったり、経理や税務関係の相談が必要になったりします。
起業時から相談している税理士であれば会社の内情を熟知しており、最適なアドバイスが可能です。
とくに起業した直後は事業で手一杯になることが多く、経理などに割く時間があまりとれません。
経理や税務についてわからないことをすぐに相談できる環境にしておくことで、事業にかける時間を増やすことが可能です。
この記事では、税理士に起業支援を依頼するメリットについて解説しました。
起業時には決定すべきことや、提出すべき書類が多く存在します。
税理士に支援を依頼することで、適切な対応が可能です。
また操業融資や補助金の申請をする際にも、税理士であれば情報提供や審査書類の作成をアドバイスできます。
起業時の支援は税理士までご相談ください。
事業を始めるとき、資金調達をするときには、事業計画書を作成します。面倒に感じる方も多いかもしれませんが、経営を成功に導く重要な役割を果たす存在です。
当記事では事業計画書作成のメリットと作成時のポイントを詳しく解説します。メリットを理解することで作成への意欲が高まり、より効果的な計画書を作れるようになるでしょう。
事業計画書は、「企業の将来的な事業展開や経営方針を体系的にまとめた文書」と説明することができます。単なる計画書ではなく、企業の成長戦略を具現化し、関係者とのコミュニケーションツールとしても機能します。
事業計画書に記載する事項として主なものは、次のように整理できます。
こうした項目をわかりやすくまとめることで事業の全体像が明確になり、より実現性の高い計画を立てることができます。また、金融機関や投資家に見せる資料としても活用でき、資金調達の際の重要な判断材料となります。
事業計画書の作成には大きな意味があり、その作業は経営における重要な投資と捉えることができます。なぜなら、作成プロセスを通じて得られる気づきや、完成後にさまざまな場面で活用できるなど、多くのメリットがあるからです。
ここでは事業計画書作成によって得られるメリットを5つに分類して、それぞれ詳しく解説していきます。
事業計画書の作成過程で、企業のビジョンや目標が具体的な形となって見えてきます。漠然としていた構想が数値目標や行動計画として明確化されることで、より実現可能な戦略を立案できるようになるでしょう。
たとえば、「売上を伸ばす」という抽象的な目標のままだと実際のところ何をするのが効果的なのか見えてきません。
これを「○〇ヶ月以内に新規顧客を○○社獲得し、売上を前年比○○%に増加させる」という具体化・数値化された目標に変えることで、必要な施策や投資の優先順位が明確になり、進捗状況の把握と評価もできるようになるでしょう。
事業計画書には市場分析や財務計画など、投資判断に必要な情報もまとめます。そのため緻密に作成された事業計画書があれば、金融機関や投資家からの信頼獲得につながるでしょう。
特に金融機関からすれば「返済能力の有無」が最大の関心事です。融資した資金が回収できそうかどうかに着目しますので、そのような視点を踏まえた事業計画書を作ることで融資もスムーズに進められるようになります。
そのほかにも、投資家向けに作成して出資をしてもらう、補助金や助成金の申し込みのために作成する、など具体的な資金調達方法に合わせた作成を行うとメリットをより大きく享受できるでしょう。
事業計画書は、経営者の思いや会社の方向性を従業員と共有する重要なツールとなります。全社員が同じ目標に向かって進むことができれば組織としての一体感も生まれますし、業務効率の向上にもつながることでしょう。
また、会社の目標や成長戦略が明確になることで、従業員一人ひとりが自分の役割をより深く理解できるようになり、モチベーションの向上にもつながります。
事業計画書の作成過程で、想定されるリスクや課題も見えてきます。これにより、事前に対策を検討し、準備することが可能になります。
たとえば、市場分析を行う中で競合他社の動向や市場の変化を把握し、それに対する対策を事前に立案できます。また、資金繰りの見通しを立てることで、資金ショートなどのリスクも未然に防ぎやすくなります。
競合分析や市場調査を通じて、自社の強みや市場での位置づけが明確になります。
これにより効果的な差別化戦略を立てられるようになり、競争優位性を高めることができるでしょう。
具体的にはSWOT分析などを行い自社の強みと弱みを整理することで、より効果的なマーケティング戦略の立案が可能になります。また、市場における自社のポジションが明確になることで、製品開発や販売戦略もより的確なものとなるでしょう。
事業計画書の効果を最大限に引き出すうえで重要なポイントがあります。
特に①現実的な数値設定、②外部環境の考慮、③定期的な見直し、という3つの要素は計画の実効性を大きく左右するため留意しておきましょう。
重要ポイント | 取り組み例 |
---|---|
現実的な数値設定 | ・直近3年間の実績データを分析するなど、過去の実績を基準に売上予測を行うこと ・費用項目の詳細な洗い出しを行い、固定費と変動費の明確に区分すること ・業界標準や類似企業のベンチマークを参考にして妥当性を評価する など |
外部環境の考慮 | ・日常的に競合他社の情報収集を行い、業界動向の把握や競合他社の動向分析に努める ・顧客ニーズの変化や新技術の導入など市場トレンドを継続的にモニタリングする など |
定期的な見直し | ・実績との差異を分析するため、月次での進捗確認を行う ・原因の特定と対策立案を進め、四半期ごとの数値修正や年度での大幅見直しなど定期的な計画の調整を行う など |
これらのポイントを意識して事業計画書を作成することで、より実現可能性の高い計画となります。
よくある失敗例を理解してそれらの回避を意識すれば、より良い事業計画書が作れるようになります。特に注意したい例を以下にまとめましたので目を通しておきましょう。
以上の点には十分気を付け、現実的な視点を持って作成することを心がけましょう。
企業や事業者の経営を支援する補助金や助成金。しかし、両者には違いがあり、各制度によっても申請手続きや注意点などが異なります。
当記事では、補助金と助成金の基本的な違いを整理したうえで、申請から事後報告にいたるまでの重要ポイントを紹介していきます。
補助金の代表的な例としては、「ものづくり補助金」や「小規模事業者持続化補助金」があります。ものづくり補助金では中小企業の生産性向上のための設備投資を支援しており、数千万円単位での補助が行われ、小規模事業者持続化補助金では小規模事業者の販路開拓等を支援しており、数十万円~数百万円単位での補助が行われています。
補助金は主に経済産業省が管轄。「事業の成長や生産性向上」などを目的とする傾向にあり、審査もあって競争率が高く、公募期間が限定されていることも多いです。
これに対し助成金には「キャリアアップ助成金」などがあります。非正規雇用労働者の正社員化を促進するなど、中小企業における「労働環境改善」を目的とした助成金制度が多数設けられています。
管轄は主に厚生労働省。要件を満たせば受給できる可能性が高く、通年で申請可能なものが多いのも特徴です。しかし補助金に比べると金額の規模が小さい傾向にあります。
ここからは補助金に焦点を当てて、実際に活用するにあたって押さえておきたい注意点を説明していきます。
補助金を活用するにあたって、まず、自社の事業計画と補助金の趣旨が合致しているかどうかを十分に検討する必要があります。
例えば、ものづくり補助金を申請する場合、単なる設備更新ではなく、生産性向上や新製品開発につながるかどうかが重要です。
補助金情報は頻繁に更新されるため最新情報をチェックすることも欠かせません。経済産業省や中小企業庁のWebサイト、地域の商工会議所などを定期的にチェックし、自社に適した補助金を見つけることが大切です。
補助金は原則として後払い(精算払い)のため、事業実施に必要な資金を一時的に自己負担する必要があります。
例えば、1,000万円の設備投資に対して補助率1/2の補助金を利用する場合、まず1,000万円を全額支払い、後日500万円が補助金として支給される形になります。
そのため以下の点に留意してください。
補助金の対象となるのは、定められた実施期間内に支出した対象経費のみです。
例えば、「交付決定後から○ヶ月以内」などと定められていることがあるため、その期間中に事業を遂行する必要があります。そこでスケジュール管理を徹底することや、対象経費の範囲を事前に確認しておくこと(不明点は必ず問い合わせる)には十分注意してください。
当然のことですが、不正受給をしてはいけません。意図的に不正受給をしていなくても、誤った認識や処理に基づく申請も防がなくてはなりません。
そこで以下の点に特に注意が必要しましょう。
例えば設備投資の補助金を利用する際、実際には導入していない設備を導入したように偽装することは厳重な処罰の対象となります。
補助金受給後も、適切な事業報告と証拠書類の保管が求められます。補助金制度の種類にもよりますが、受給が決まってから一定期間は事業報告書の提出が求められ、しばらくの間チェックが続くこともあります。
領収書や請求書などの証憑類も適切に保管し、経費等のお金の流れについて、一つひとつ客観的資料に基づき説明できるように備えておきましょう。
準備や手続きに大きな負担がかかる補助金ですが、専門家も活用しながら作業を進めていけば本業を圧迫せず効率的に進められます。また、補助金受給は実績にもなりますし、これから始めようとしている新たな取り組みがあるときは、「要件を満たす補助金制度はないだろうか」という視点を持つと良いでしょう。
補助金と助成金は、いずれも国や地方自治体などから支給される資金であって、返済が不要であるなど、事業者にとって効果的な資金調達方法の1つです。共通点も多いですが、厳密にいうと管轄省庁の違いや、財源、資金支給の目的なども違っています。その他にもさまざまな点で異なる傾向を持っています。
「補助金や助成金って何?」「補助金と助成金どんな違いがある?」と疑問を持つ方に向けてここではその違いを簡単にまとめました。
※以下で取り上げる違いは一般的な傾向であり、個々の制度によって異なる場合もあることにご留意ください。
補助金にも各制度によって異なる目的がありますが、全体の傾向としては地域経済の活性化や技術開発であるなど、「経済活性化」「産業振興」を目的としたものが多くなっています。
そこで管轄についても、日本の産業や経済の振興に関して所掌する経済産業省であるケースが多いです。
一方の助成金は、雇用の創出や労働環境の改善、人材育成であるなど、「労働関連の改善・向上」を目的としたものが多いです。
そこで管轄は、国民生活や健康に関すること、雇用に関して所掌する厚生労働省であるケースが多いです。
受給要件の内容、審査の厳しさは、当然補助金や助成金の区別とは別に各制度によって異なっています。しかしながら、傾向としては補助金の方が厳しいとされています。一定の要件を満たすことはもちろん、そのうえで審査に通り採択されなければ資金を受給することはできません。また、実績報告が必要となるケースも多いです。
一方、助成金は所定の要件を満たせば受給できる可能性が高いです。なお、制度によっては補助金同様実績報告が必要となる点には注意しましょう。
補助金の方が求められる取り組み内容の規模が大きい傾向にあり、その分受給できる額の規模も大きい傾向にあります。数百万円から億単位にまで達することもあり、研究開発や大規模な設備投資などを検討するときは使える補助金がないかと一考すると良いでしょう。
なお、補助金の場合は国の税収を主な財源としています。
これに対し助成金は、従業員の雇用や人材教育への取り組みなどに対して支給されることが多く、求められる取り組み内容の規模が補助金に比べて小さいです。これに伴い、支給される額も数十万円から数百万円程度と補助金に比べて低額な傾向にあります。
なお、助成金の場合は企業と労働者が負担する雇用保険料が主な財源となっています。
補助金だと実施が年1,2回程度で、特定の期間内に応募を受け付ける形で運用されているものが多いです。応募可能期間は数週間~数ヶ月程度で、各回での応募要項をよく確認しておく必要があります。
助成金については長期間、あるいは通年募集のものもあり、通年で受け付けているものについては所定の要件さえ満たすことができればいつでも申請ができます。ただし助成金にも予算の限度があるためその年度における申請受付が終了する可能性も考慮する必要があるでしょう。
最後に、補助金と助成金の例を簡単に紹介していきます。
《 補助金の例 》
《 助成金の例 》
ほかにも数多くの補助金や助成金があり、それぞれに受給額や要件なども異なっています。自社に適した制度を探すのにも苦労するかもしれませんが、そのような場合は専門家を頼り、ご相談いただければと思います。
税務調査は、税務署が事業者の申告内容を確認するために行う調査です。突然の通知に戸惑うかと思いますが、適切に準備して対応をすればスムーズに調査を終えることができます。
そのために大事なことを当記事では解説し、税務調査の流れから準備すべきことまで、事業者の方が知っておきたい情報をまとめていきます。
税務調査とは「税務署が納税者の申告内容が正しいかどうかを確認するために行う調査」のことです。
調査の目的は「適正・公平な課税の実現」にあり、法人税や消費税、所得税などについて帳簿書類や伝票類を確認。適正な納税が行われているかを確認します。
税務署による調査には、大きく分けて①任意調査と②強制調査の2種類があります。
多くの場合は①により実施され、比較的簡易な書面調査で済むこともあれば、実際に事業者にやってきて行う「実地調査」が行われることもあります。
一方の②は「犯則調査」とも呼ばれ、重大な脱税の疑いがある場合などに実施される特殊な税務調査です。証拠資料の隠匿などを防ぐため事前通知なしに調査が入るのが大きな特徴です。
すべての事業者が毎年税務調査を受けるわけではありません。数年に一度、あるいはそれ以上の期間調査を受けないこともあります。
ではどのような場合に調査の対象となるのでしょうか。主な理由として、以下のようなものを挙げられます。
ただし、これらはあくまでも一般的な例であり、これら以外の理由で調査対象となることもあります。また、定期的な調査の一環として選定されることもあるため、調査対象となった時点ですでに申告ミスや不正についての強い疑いがかけられているとは限りません。
税務調査は通常、事前通知から始まり、実地調査を経て、調査結果の説明を受けて終了となります。それぞれの段階で適切な対応が求められますので、流れを把握しておくことが重要です。
税務調査は原則として事前通知制が採用されています。
税務署から連絡を受け、調査の対象税目や対象期間、調査の概要、必要な書類、調査日時などが伝えられます。基本的には書面で通知されますが、場合によっては電話で連絡を受けることもあります。
通知の日から数日後など、1週間を空けず調査が開始されることは通常ありません。ただ、指定されたのが都合の悪い日なら合理的な理由(決算期や繁忙期と重なる等)を説明して変更を申し出ることは可能です。
調査当日は、最初に調査官による身分証の提示と調査の概要説明が行われます。その後、帳簿書類の確認や現金の実査、在庫の確認などが実施されます。
調査では、「代表者等へのヒアリング」「総勘定元帳、仕訳帳、請求書、領収書などの確認」「現金残高の確認」「在庫や固定資産の確認」などが行われ、1日で終わることもあれば数日間に及ぶこともあります。
調査の結果、申告内容に問題がなければその旨が最後に説明され、調査は終了となります。
一方、修正すべき点が見つかった場合は、調査官から具体的な内容の説明があり、修正申告や更正の請求などの手続きを始めることになります。
なお、調査結果に不服がある場合は不服申し立ての手続きをとることも可能です。
税務調査のために準備すべき書類や資料は多岐にわたります。そのうち一般的なものを下表にまとめます。
準備書類の分類 | 具体的な準備書類の例 |
---|---|
申告書関連 | 法人税申告書 消費税申告書 決算書 |
帳簿 | 総勘定元帳 仕訳帳 現金出納帳 売掛帳、買掛帳 固定資産台帳 |
証憑類 | 領収書 請求書 納品書 注文書 契約書 |
金融関連 | 預金通帳 当座預金照合表 借入金の返済予定表 |
資産関連 | 在庫表 固定資産の購入・売却に関する資料 |
人事関連 | 給与台帳 源泉徴収簿 扶養控除等申告書 退職所得の受給に関する申告書 |
その他 | 登記簿謄本 定款 株主総会議事録 取締役会議事録 旅費精算書 稟議書 各種規程(就業規則など) |
これらの書類は通常、過去3年分を準備する必要があります。
税務調査において重要なのは、調査に対し誠実に対応することです。不正や隠ぺいがないのならそれほど身構える必要はありません。調査がスムーズに進むよう、以下の点に注意して対応しましょう。
調査官に対し威圧的な態度を取るべきではありません。また、過度に緊張する必要もありませんが、以下の点には注意しましょう。
対応に不安がある場合には、税理士に立ち会ってもらうことも可能です。普段から会社の申告を任せている税理士がいるなら適切な受け答えができるようになるでしょう。
調査の結果、申告内容に誤りが見つかり、修正申告を求められることがあります。
このとき、指摘された内容をよく確認して不明な点があるなら説明を求めましょう。金額の算定根拠について十分な説明を受け、何が誤りだったのか、どのように修正することを求めているのか、よく確認しておくべきです。
修正申告に応じるとしても、不明瞭な点が少しでもあるならその場での即答は避け、必要に応じて社内での検討や税理士への相談時間を確保することをお勧めします。指摘内容が複雑であったり金額が大きかったりする場合は特に慎重な判断が必要です。
企業が活動を続ける中で、税務書類の作成は避けて通れない重要な業務です。
具体的な業務内容は企業の活動内容や規模によっても異なりますが、当記事では多くの企業に関わる主な税務書類を取り上げています。また、税務書類作成につながる実務に関してもご紹介します。
税務書類にも多くの分類があります。例えば税務署に提出することが求められている各種申請書や届出書、従業員からの源泉徴収について記載した源泉徴収票、日々の取引を記載した帳簿書類、そしてこれらの業務の集大成ともいえる決算書や税務申告書などです。
各種税務書類について概要を掴んでおきましょう。
「源泉徴収票」とは、従業員の給与から源泉徴収した税額などを記載した書類のことです。
毎年、12月に行う年末調整が終わってから、1月ころには作成を行います。その際は、まず年間の給与支払額と源泉徴収税額を集計。そして年末調整の結果を反映し、所定の様式に従って記入を進めていきます。
税務署に何かを申請したり、届け出たりする場合に提出する書類もたくさんあります。そのすべてが義務として課されているわけではなく、任意で提出するものもたくさんあります。
例えば「青色申告承認申請書」は青色申告を行うための申請書ですが、すべての企業に提出が義務付けられているわけではありません。
ただし、青色申告による税務上の特典を受けるためにもできるだけ申請しておきたい手続きでもあります。
このように、任意ではあるものの恩恵を受けるため多くの企業が手続きを行っているケースもありますのでご留意ください。あらかじめ申請・届出をしておいた方が良いかものがあるかどうか、税理士とも相談しながら検討すると良いでしょう。
収入や支出などを記録するための「帳簿書類」も重要です。
例えば「仕訳帳(取引を仕訳して記録する帳簿)」や「総勘定元帳(仕訳帳を勘定科目ごとに集計した帳簿)」が代表的で、さらに「補助簿(売上帳、仕入帳など特定の取引を記録するための帳簿)」も通常作成することになります。
これらの書類は税務調査の際に提示を求められることもありますし、決算書作成の基礎となる資料でもあるため、正確に作成し、適切に保管しておくことが大事です。
事業年度ごとに経営状態や財務状況をまとめた「決算書」も特に重要な書類です。以下にその種類をまとめます。
主な決算書 | |
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損益計算書 | 一定期間(通常1年間)における企業の経営成績を表す。 収益、費用、そして最終的な利益(または損失)を具体的な金額で示す。 |
貸借対照表 | 特定の時点(決算日)における企業の財政状態を表す。 企業が保有する資産、企業が負っている負債、そして純資産の3つの要素から示す。 |
株主資本等変動計算書 | 一定期間における株主資本の変動状況を表す。 企業の資本金、資本剰余金、利益剰余金などから構成され、期首~期末にかけて各要素がどのように増減したのかを示す。 |
キャッシュフロー計算書 | 一定期間における企業の現金・預金等の収入と支出を表す。 資金の流れを把握し、財務状態の安定性を分析するために役立つ。 |
税務書類としてもっとも重要ともいえるものが「税務申告書」です。
例えば法人税申告書(個人の場合なら確定申告書)や消費税申告書など、申告制度を採用している各種税について、納めるべき税額を計算してまとめた書類が該当します。
法人税に関しては事業年度終了翌日から2ヶ月以内に申告しないといけないため、3月決算の企業なら5月末までに法人税申告書を作成し、提出しないといけません。この業務の基本的な流れは次のとおりです。
税務書類、とりわけ決算書や申告書を作成するために重要なのは日々の仕訳です。そしてこの日次業務を一定期間おきに整理し(月次業務)、最後に年間の情報を整理していきます(年次業務)。
日々の取引の仕訳、現金・預金の管理など、これら「日次業務」はのちの税務書類作成の基礎となりますので丁寧に記録していくことが重要となります。
大量の仕訳を要する企業だとスピードが求められることもあるかもしれませんが、誤った記録をしてしまうとやり直しの作業が発生してしまいますし、税法に違反してしまうケースもあります。そのため正確さが求められる業務といえるでしょう。
また、税法の改正も頻繁に行われているため、最新情報のチェックも欠かせません。
日次業務を積み重ね、「月次業務」として月次決算を実施します。法律上の義務ではありませんし、実際これを行っていない企業もたくさんいます。
活動の規模が大きくない、単純な処理が多い、といった場合には無理に行う必要もないでしょう。しかし月次業務を行っていると定期的に振り返りミスにも気づきやすくなりますので、決算期の負担を軽くすることができます。
年に1度の決算や申告・納付などが「年次業務」です。
先に決算書類を作成しましょう。そしてこれをもとに税務申告書を作成していきます。ただし企業会計上の処理がそのまま税務会計上の処理に当てはめられるとは限りません。
例えば企業会計でいう「費用」と税務上の「損金」には若干の差があるため、この調整も行う必要があるのです。
昨今の経理・税務業務は会計ソフトを使って進めるのが一般的です。これを使えばすべての帳簿書類を一つひとつ作成していく必要はありませんし、月次レポートや決算書の作成なども大半は自動作成されます。
以下に、会計ソフトを使用した場合の業務の流れを示します。
日次業務 | 取引データを、会計ソフトを使って入力していく。 領収書やレシートなどをスキャンし、自動で情報を読み取り仕訳までしてくれる機能を搭載しているケースもある。 オンラインバンキングと連携し、銀行取引に関しても自動で取り込む機能を活用するとより効率的。 |
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月次業務 | 会計ソフト上で月次決算書を自動生成。銀行口座や売掛金、買掛金の残高を確認して会計ソフト上の数値と一致しているかを確認する。 |
年次業務 | 会計ソフト上で各種決算書を自動生成。税務調整を行い、課税所得を算出する。 e-Taxとの連携で、作成した申告書を電子的に提出する。 |
会計ソフトを効果的に活用することで業務効率は大幅に向上しますし、ペーパーレスやリモートワーク導入にも大きく貢献します。
会社は事業で利益を出すだけではなく、取引の内容やお金の流れについて正確に把握しないといけません。その観点から大切な概念が「会計処理」です。当記事では会計処理という言葉が指す意味や業務内容、業務として進める際に知っておくべき原則などを解説していきます。
会社は経営理念の達成やその報告を行うため、日々の活動に関して記録を残さないといけません。適切な経営判断を下すためにもこれまでの活動内容を記録し、これを分析できる状態にしておくことが大切です。
そこで「取引」という活動内容から生じる「利益」等を具体的にまとめていきます。金額という形でこれを表すのですが、そのための処理が「仕訳」です。仕訳を行うことでこれまでの取引結果を整理し、その記録を、経営判断を下すためや自社の財務状況を説明するために活用します。
こうしてお金の流れを帳簿に記録していく仕訳、それに附随する分析等を「会計処理」と呼んだりもします。ただし厳密な定義はありませんし、使われるシーンによっては会計処理に含まれる範囲が違うこともある点は留意しておきましょう。
なお、会計処理には次の2種類があると考えられています。
「会計処理」の種類 | |
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管理会計 | 企業の経営状況を把握し、経営判断を支援するための内部的な会計のこと。 どの商品やサービスが利益を生み出しているのか分析したり、コスト削減が可能な分野の特定をしたり、業績予測や経営リスクの評価を行うための会計処理が管理会計にあたる。 |
財務会計 | 企業の財政状態や経営成果について、株主や取引先などの外部へ公表することを想定した会計。 貸借対照表や損益計算書、キャッシュフロー計算書の作成などに係る会計処理が財務会計にあたる。 |
「会計処理」と似た言葉に「経理」があります。
同じようなニュアンスで使われることもあり、実際意味合いが大きくかけ離れた言葉ではありません。
ただ、一般的には「経理」に含まれる業務範囲の方が広いと考えられます。入出金の管理や請求書の発行など、仕訳以外のさまざまな業務も「経理」には含まれています。
「会計処理」の業務内容としては、次のような例が挙げられます。
財務諸表の作成、そして税の申告などを最終的に行う必要があるところ、年に一度の業務のみで決算まで行うのは困難です。日常業務、月次業務を繰り返し進めておかないと業務量が追い付きません。また、自社の状況を把握して意思決定に反映させるためにも期中での会計処理が欠かせません。
会計処理のやり方は、会計基準としてルール化されています。その基本となる考え方は「企業会計原則」と呼ばれ、次の3つの原則から構成されています。
➀ 一般原則
② 損益計算書原則
③ 貸借対照表原則
このうちの一般原則は、さらに次に掲げる7つの原則から成り立っており、経理業務における重要な指標として考えられています。
真実性の原則 | 企業の財政状態が真実の報告であることを要請する原則。 |
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正規の簿記の原則 | すべての取引に関して正確な会計帳簿を作成することを要請する原則。 |
資本取引・損益取引区分の原則 | 資本取引と損益取引を混同してしまうことのないよう、これらを明瞭に区別することを要請する原則。 |
明瞭性の原則 | 一定のルールに準拠して作成し、財務諸表を明瞭に表示することを要請する原則。 |
継続性の原則 | 正当な理由なく処理方法を変更せず、同じ方法を継続することを要請する原則。 |
保守主義の原則 | 不利な影響を及ぼし得る取引に関して、慎重に会計処理を行うことを要請する原則。 |
単一性の原則 | 裏帳簿などを作成せず、財務諸表の元となる会計帳簿は1つであることを要請する原則。 |
会計処理を効率的・効果的に進められている企業もいれば、なかなか上手くいっていない企業も存在します。
よくある問題としては「デジタル化ができておらず、業務効率が低い」「処理方法が属人化してしまっており、特定の人物でなければスムーズに業務が回らない」といったものです。そしてこうした現状に現場も気が付いていながら、目の前の業務に追われて改善に向けた取り組みができていないケースも多いです。
会計処理に関わる体制の改革ができている企業とそうでない企業とでは大きな差が生まれてしまいますし、その影響が企業全体の競争力に表れる可能性もあります。
「DX化」という言葉もビジネスでよく使われるようになっていますが、その前段階として、まずは会計処理のデジタル化を進めなくてはなりません。具体的には次のような施策に取り組むと良いでしょう。
紙を使っていたのでは情報共有、データの利活用が進みません。まずは会計ソフトを導入し、パソコン上で処理を進められる基盤を整えましょう。そうするとペーパーレス、キャッシュレスも進めやすくなります。初めは体制構築に時間・コストがかかるかもしれませんが、その負担が将来的には利益となってかえってくるはずです。
フォーマットの統一に関してもそうです。社内で使う各種書類の様式がバラバラだと、書類作成に毎度時間がかかりすぎてしまいますし、チェックにも手間がかかります。導入した会計ソフトや業務システム、あるいは別のクラウドサービスなどでもかまいませんが、フォーマットを統一することも大事です。
そして書類の管理方法も統一し、一元管理できる体制を整えましょう。
「会計処理の方法」や「体制の改善」にお悩みの方は税理士もご活用ください。顧問税理士がつくことで仕訳などの業務を任せることもできますし、システムの導入に関してのアドバイスを求めることもできます。
創業計画書は、事業を立ち上げるときに「どんな事業をどのように進めていくのか」をまとめた資料です。主に創業融資を受けるために作成をすることになるでしょう。
ここで作成するときの手順、重要なポイントや準備物について説明していますので、創業融資を受けるのであれば要点を押さえて良い創業計画書を作れるように備えておきましょう。
創業計画書を作成するときは、まず全体像を把握し、創業動機や事業のコンセプトを言語化できるようにしておきましょう。その上で事業の具体的内容や資金計画のこと、売上の見通しなどを希望的観測とならないよう、理由や根拠とともに記載していきます。
いきなり計画書の中身を作り出すのはハードルが高いです。まずは「どんな情報をまとめる必要があるのか」を理解しておきましょう。
基本的に決まったフォーマットを利用する必要はなく、各社好きなように書いていけば良いのですが、日本政策金融公庫が公開している創業計画書のフォーマットを参考にすると次のようにまとめられます。
創業動機は、創業計画書の冒頭に記載するため、審査を行う方が最初に目を通す箇所です。
「成り行きで」「たまたま思いついた」ではなく、創業を決意するに至った経緯に納得がいく書き方をした方が読み手としても良い印象を持ちやすいです。
また、創業をするに至った理由が共感できるものであったり、事業の必要性を感じさせるものであったりすると良いかもしれません。その上で、動機との整合性を考えつつ事業コンセプトを明確にしておきましょう。
事業のコンセプトを自分でもよく理解し、言語化できていると、そこから具体的な計画の内容も立てやすくなります。
事業内容や詳細な資金計画等ももちろん重要ですが、それらの情報に説得力を持たせるため、創業者の経歴の書き方にも工夫が必要です。
同じ内容でも、過去に十分な実績を持っている方とそうでない方とでは印象に差が生まれてしまいます。そのため淡々と過去の経歴を書くだけではなく、事業の成功確率が高いと思わせるような書き方をすることが大事です。
ここでアピールすべきポイントは次の情報です。
勤務していた会社名を記載するだけでなく、「〇〇~〇〇まで、〇〇の業務にあたっていて、〇〇という目標を達成した。〇〇という役職に就いていた。」など、創業に関連する能力があることを端的に書き記しましょう。
次に、「事業者として何を提供するのか」「どのように提供するのか」「どうやって競合に勝つつもりなのか」を具体的に検討し、記載していきます。
そのとき商品やサービスのジャンルを伝えるだけでなく、実際にその事業者がどんなことをしようとしているのかがイメージできるよう、具体化します。
また、他社との差別化も重要です。
多くの場合、競合他社が存在していると思われるため、その他社とは何が違うのか、すでに競合がいる中なぜ自社が選ばれるのかを記載します。
「他社より技術的に優れている」「これまでになかったアイデアがある」「需要に対して供給がまだまだ不足している」など理由はいろいろ考えられます。しかし、いずれにしろ根拠をもって説明できることが重要です。
集客の方法も明確化し、仕入先等も確保した上で記載していきましょう。
「必要資金とその調達方法」の記載は創業計画書の中でもよくチェックされる重要箇所です。
そこで次のポイントを押さえて検討・記載を進めていきましょう。
店舗・工場・機械・車両等の設備資金、仕入費・広告宣伝費・人件費などの運転資金については、根拠のない数値を記載すべきではありません。
これから始めようとする事業内容と照らし合わせて、何をどれだけ備える必要があるのかを具体的に検討していく必要があります。その上で見積もりなども行い、現実に発生する金額にできるだけ近づける必要があります。これは創業融資を成功させるためだけでなく、事業を失敗させないためにもとても重要なことです。甘い見積もりで事業を始めてしまい想定以上の資金が必要になると、事業を継続することができずすぐに閉業することになるかもしれません。
創業融資の観点からは「自己資金割合」も要チェックです。事業内容にもよりますが、一般的には必要資金の3割ほどは自己資金で用意できていることが求められます。
日本政策金融公庫の創業融資制度においても、少なくとも1割以上が自己資金で用意できていることが要件とされています。
売上高や売上原価、人件費等の経費、そして利益の大きさを記載することになりますが、それぞれの数値は根拠のあるものでなくてはなりません。
そこで何の根拠も示さず「売上は月に〇〇万円、経費はおよそ〇〇万円になる予定だから、利益は〇〇万円になるはず。」といった記載をしてしまうと、その値が正確なものであったとしても良い印象は持たれません。
一方、同じ見通しであっても「なぜその金額になるのか」を読み手に伝えられると創業計画書の内容に説得力が持たせられます。
創業融資を申し込む際、金融機関からいくつか書類の提出を求められます。
「創業計画書」や「本人確認書類」、「登記簿謄本」など提出するように言われた書類については必ず準備しましょう。
その上で、創業計画書を補足する形で「収支計画書」や「資金繰り計画書」「創業者の経歴書」「市場調査に関する資料」なども用意できると良いです。
創業計画書の中で情報が完結できれば別途用意する必要はありませんが、網羅的に記載したのでは情報が多すぎて創業計画書が見にくくなる可能性もあります。そのような場合に添付書類としてこれらの書類を備えておきます。
ただし、複数の資料を用意するときはそれぞれの整合性に十分注意しましょう。
日本政策金融公庫は政府系の金融機関で、事業者にとっては資金調達先候補の1つとなります。民間の金融機関にはあまり見られない特徴・メリットがあることから、「融資を受けるのが難しい」と悩んでいる事業者にも利用がおすすめできます。ここではそのメリットについて解説をしています。
「日本政策金融公庫」は株式会社であり行政とは異なりますが、政府による出資が100%を占めているため「政府系の金融機関」と表現されることもあります。
同公庫が設立された背景も“経済の発展”や“国民生活の安定”にあり、事業内容も次の3つから構成されています。
業務種別 | 業務内容 |
---|---|
国民生活事業 | 国民一般向けの事業 ・小口の融資 ・創業支援やソーシャルビジネス支援 ・教育資金の貸付 など |
農林水産事業 | 農林水産向けの事業 ・農林水産業の担い手を育てるための融資 ・加工流通分野に向けた融資 ・コンサルティングなどによる支援 など |
中小企業事業 | 中小企業向けの事業 ・新規事業や事業再生に向けた支援 ・長期事業のための融資 ・経営課題解決に向けたサポート など |
日本政策金融公庫の展開する事業を活用することのメリットは、ざっくり言うと「資金調達がしやすい」という点にあります。
同公庫の融資に次の特徴があることがその理由です。
融資は日本全国さまざまな金融機関で行われています。それぞれに融資条件や審査の厳しさは異なりますが、審査では基本的には借主の返済能力やこれまでの実績などが評価されます。
すでに長く事業活動を続けており売上・利益を出し続けてきた事業者であれば融資も利用しやすいですが、創業段階でまだ十分な実績を積めていない事業者はなかなか審査のときに信用を得るのが難しいという実情があります。
しかし、同公庫であれば創業間もない事業者でも比較的融資が利用しやすいです。審査の基準はどの金融機関も開示していないため、審査の通りやすさの程度を具体的に示すことはできませんが、同公庫が創業に取り組む人や小規模事業者向けの資金調達に力を入れていることは確かです。
融資による資金調達で問題になりやすいポイントの1つが「担保や保証人が必要になる」という点です。
民間の金融機関でも必須とは限りませんが、十分な実績がない場合など返済能力に不安があると思われるような場面だと、担保や保証人を求められることがあります。これは経営者にとって大きなリスクであり、心理的に、攻めた経営戦略も立てづらくなってしまいます。
また、事業が上手くいかなかったときに法人が破産するだけでなく、代表者個人も自己破産に追い込まれるケースがあります。
近年はこうした問題を是正するための動きも見られますが、同公庫であれば担保や保証人なく受けられる仕組みも用意されており、経営者も安心して資金調達を進めやすくなっています。
貸主としては、融資に際して利益が発生しないとやる意味がありません。そこで金利が設定され、元本に対応して返済すべき金額が一定割合上乗せされます。他にも、返済期間や据置期間(返済開始までの猶予期間)などの返済条件が初めに定められます。
この条件に関しても同公庫は比較的優しく、民間の金融機関より「低い金利を設定してもらいやすい」「返済期間や据置期間を長く設定してもらいやすい」などのメリットを持ちます。返済期間に関しては長く定めることでかえって総返済額が増えることもありますので注意が必要ですが、適切に条件を定めることで、資金繰りの負担を軽減しつつ融資を受けることもできるでしょう。
日本政策金融公庫ではさまざまな融資制度が用意されており、創業段階あるいは創業から間もない事業者の場合、そこに併用する形で「新創業融資制度」を活用するとより融資条件を緩和することができます。
新創業融資制度の大きな利点は、原則として「無担保」かつ「無保証人」であることです。また、一般的には必要資金のうち30%ほどは自己資金が必要とされるところ、同制度においては「自己資金割合10%」を確保していれば利用条件を1つ満たすことができます。
そのため創業段階の事業者は利用を検討してみると良いでしょう。なお、融資限度額のことなどいくつか条件や制約があるため注意が必要です。
《 新創業融資制度の注意点 》
以上のメリット・特徴を踏まえると、日本政策金融公庫の利用が向いている事業者は以下のようにまとめることができるでしょう。
金融機関それぞれに特徴があり、良し悪し、向いている事業者・向いていない事業者、などには違いがあります。民間の金融機関からの資金調達が上手くいきそうにないときは、同公庫の事業内容もチェックしてみると良いでしょう。また、資金調達のサポートに取り組む専門家を活用すれば手続もよりスムーズになります。
経理業務1年間の総まとめが「決算」です。自社の財産状況、利益の状況などをまとめるだけでなく、貸借対照表や損益計算書には役員や株主、さらには銀行や一般投資家などさまざまな利害関係者が注目しています。
これらの書類を作成するとても重要な業務について、大まかな流れやスケジュールをここで紹介し、業務を遂行するうえで重要なポイントについても解説していきます。
1年間処理してきた取引を集計し、会社の経営成績や財政状況をまとめていく作業が決算です。
具体的には「貸借対照表」と「損益計算書」などの決算書を作成していくことになります。※ほかには、「株主資本等変動計算書」「キャッシュフロー計算書」などの決算書もある。
この決算書を作成する目的は、第一に「株主への報告」にあります。
同族経営など小規模の会社であれば株主が経営者を兼ねていることも多く、株主兼経営者の方であれば内情をよく知っていますのであまり報告として行う必要性はないでしょう。しかし、外部から直接経営には参画しない株主が加わることもあり、そのような内情をあまり知らない株主からすると、決算書は会社の状況を把握する大事なツールとして機能しているのです。
また、会社と取引を行う他社や銀行なども決算書をチェックすることがあります。大きな契約を交わすときは利害を共にしますので、倒産などのリスクを受けないよう決算書を見て会社状況を調べておくのです。
決算といっても普段の処理と独立した業務ではありません。結局は日々の仕訳の積み重ねにより決算書が完成に近づいていきますので、①日々の仕訳、②月次決算、③決算整理、という流れで決算書が作成されます。
なお、今では会計ソフトを利用するのが一般的ですので、一つひとつの書類をすべて作成していく手間は発生しません。毎日の仕訳を行うことで当月における試算表まで自動的に作成されていきます。
もし決算日が3月31日とすれば、決算業務のスケジュールはおおむね次のようにまとめることができます。
※1 減価償却、経過勘定の計上、売上原価の算定、引当金の計上 などを行う。
※2 原則として決算日から2ヶ月以内に行う。
決算業務に取り組むときは、以下のポイントを押さえておくと良いでしょう。
また、決算業務は税務申告と密接に関係しています。決算書の内容は税務申告の基礎となりますし、税理士とも連携して税務上の注意点や節税対策などを確認しておくと良いです。
決算業務を効率的に進めるうえで重要なことは、次のようにまとめられます。
決算業務を効率化するために大事なこと | |
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業務フローの標準化やマニュアル作成 | 業務フローを標準化し、各ステップでどの担当者が・何を・いつまでにやらないといけないのかを明確にする。これにより作業の重複や漏れを防ぎ、効率的な連携を図る。 また、マニュアルの作成など形に残しておくことで担当者の異動や新人の参加にも対応しやすくなる。 |
領収書などの電子化 | 請求書や領収書などの証憑類は電子化することも認められている。電子データとして保管することで、検索や参照も容易になり紛失のリスクも軽減される。クラウドストレージを活用すれば関係者間での情報共有もスムーズになるため、効率化の観点からは電子化への対応がとても効果的。 |
ITツールの活用 | 電子化するだけでなく、そのデータをより扱いやすくするためのITツールを導入すると良い。 会計ソフトはもちろん、ERPのような基幹システムも導入してデータ利活用を図れば、決算以外の分野にもその情報を活かせる。 |
担当者間の情報共有 | 決算業務は経理担当者だけでなく、営業や総務など他部署との連携が必要となる場面も多い。その連携をスムーズにするため、チャットツールやグループウェアなども活用し、コミュニケーションを円滑にすることが重要。 顧問税理士がいる場合、その税理士との連携が取りやすくなるような体制を整えるのも大事。 |
定期的な見直しと改善 | 業務フローやITツールの活用状況、担当者間の連携など、決算業務に関わるさまざまな要素を定期的に見直し、改善していくことが重要。 状況を見返すことで業務のボトルネックが特定できるようになり、更なる効率化を実現できる。 |
作成された決算書は、株主総会または取締役会へ提出し、そこで承認を受けます。その後は官報などに掲載しますので、世に公開されることとなります。
※よくある非上場の中小企業であれば貸借対照表のみ。資本金5億円以上または負債200億円以上のいずれかを満たす大会社なら貸借対照表と損益計算書を公開する。
なお、合同会社においてはこの決算公告の義務がありません。