ビジネスを始めるために会社を立ち上げる場合、「定款」を作成することになります。定款は会社にとって非常に重要な存在であり、そこに記載する内容に関して慎重に検討していく必要があります。
よく「定款の作成が必要」と言われているものの、なぜ必要なのか、なぜ定款は重要なのかと疑問を抱いている方もいるかもしれません。そのような方に向けて、ここでは定款の重要性や存在意義、そしてその内容として定めるべき事項についても解説をしていきます。
定款は会社のルールブックとして機能するものですが、就業規則などよりも根本的な原則を取りまとめたものであり、会社にとっての憲法とも表現されるほど重要な存在です。
そもそも法令上、定款を作成しなければ会社を設立することができませんので、定款は形式的にも大きな意味を持ちます。
また、許認可を要する事業内容を始める場合には、定款に記載する事業目的が審査の対象にもなります。そのため定款に必要な記載がないと、特定の事業に関しては行うこともできなくなるのです。
組織の在り方に関しても定款の内容次第で変わってきます。
例えば取締役会の設置や監査役の設置など、機関の設置は定款で定めることになります。設置した機関によって対外的な信用の程度や会社の機動力も変わってきますので、この点からも定款の重要性を説くことができるでしょう。
その他会社の基本情報や役員等に対する制限など、定款でしか定められない様々な事柄を必要的あるいは任意的に設けていくことになります。
定款への記載が必要的な事項があります。
「絶対的記載事項」と呼ばれ、これを欠く定款は無効となります。
会社法第27条では下表にある5つの記載事項を列挙しています。
絶対的記載事項 | 記載内容 |
---|---|
目的 | 会社として営む事業の内容を記載する。 何をする会社なのかが分かるよう記載する一方で、細かく記載しすぎると遂行できる事業内容に制約がかかってしまうため注意。 そこで、最後に「前各号に関連する一切の事業」と記載するのが通例。 許認可を取得する予定なら、申請が通るように記載する必要がある。 |
商号 | 会社の名称を記載する。 商号と本店の所在地が一致する会社は複数設立できないことに注意。 「株式会社」の文字が含まれていなければならないこと、使用できない文字・記号があることにも注意。 |
本店の所在地 | 本店の場所を記載する。 最小行政区画までで良いため、「〇丁目」や「〇番地」までは記載しないことが多い。そうすることで同じエリア内での引っ越しをしても定款の変更をする必要がなくなる。 |
設立に際して出資される 財産の価額又はその最低額 |
会社設立のために、何を、いくら出資したのかを記載する。 「金○○万円」などと記載することが多い。 現物出資の場合にはその旨記載する必要がある。 |
発起人の氏名又は名称及び住所 | 発起人に関する情報を記載する。 発起人の住所氏名に並べて、割当てられる株式の数と払込金額もまとめて記載することが多い。 |
「発行可能株式総数」に関しても定款に記載しましょう。
会社法第27条の絶対的記載事項として列挙はされていませんが、会社設立までに定める必要のある事項です。
特に公開会社として株式を自由に譲渡できるようにする場合、発行可能株式総数はよく考えて設定する必要があります。
「発行済株式総数」の4倍を超える発行可能株式総数を定めることは会社法で禁じられているからです。発行可能な株式数に余裕があり過ぎると、いつでも既存株式の価値を希薄化できてしまうことに由来します。
非公開会社の場合にはこのルールが適用されないため、公開会社ほどシビアに考える必要はないでしょう。
絶対的記載事項のように定款への記載が必須とはされていませんが、“ルールとして有効に機能させるためには定款への記載が必要”とされている事項があります。
これを「相対的記載事項」と呼びます。
例えば公開会社・非公開会社を決定づける「株式の譲渡制限」は相対的記載事項です。
譲渡制限を設ける場合、「株式の譲渡をするには、取締役の承認を要する。」などと定款に記載します。取締役以外にも、株主総会や代表取締役を承認機関として定めることも可能です。
譲渡制限を設けると株式の譲渡が自由にできなくなるため、株式を使った資金調達は難しくなりますが、外部の者が経営に参画することを防ぐことができるようになります。
「役員の任期」を伸ばすことも定款への記載により実現可能です。
例えば取締役の場合、公開会社だと原則通り2年の任期に縛られるのですが、非公開会社なら最大10年まで伸ばすことができます。
会社を設立するとき、①現物出資や②財産引受を行ったのであればそのことを定款に記載しなければなりません。また、③発起人の報酬を定めるとき、④会社が負担する設立費用があるときにも定款への記載が必要です。
これら①~④の事項は「変態設立事項」と呼ばれています。
設立後の会社財産への影響が大きい事柄であるため、変態設立事項として区分し、特別のルールを適用しています。
例えばもっとも利用例の多い現物出資に関しては、基本的に価額の評価が正しいことにつき調査をしなければなりません。
定款には、出資した発起人の氏名(設立時に現物出資ができるのは発起人に限られる)、出資した物、その価額、割当てる株式の数を記載します。
「定款の記載方法が分からない」「自分で作成するのは不安」という方は専門家に頼んで作成を進めていくようにしましょう。
顧問税理士と相性が合わない、税理士の対応・レスポンスが遅いなどの理由で顧問税理士を変更したいと考えることもあるでしょう。そのような状況になったとき、どのようなタイミングで変更をすれば良いのでしょうか。
ここでは“顧問税理士を変更するのに適したタイミング”について、いくつか紹介していきます。
税理士変更のタイミングとして最もおすすめなのは「決算の終了」のタイミングです。
決算日の翌日から2ヵ月以内が決算申告書類の提出締め切りです。
そのため企業・顧問税理士ともに決算業務が落ち着くのは、3月決算の企業であれば6月頃、9月決算の企業であれば12月頃です。
また、個人事業主の場合は確定申告の締め切りが3月15日のため、4月頃が決算終了し落ち着くタイミングと言えるでしょう。
決算を終えたタイミングでの顧問税理士変更であれば、新たな税理士を探す作業や引継ぎ作業に時間的な余裕が生まれます。
税理士としても、仕事の区切りとなる作業を終えた時期での変更は受け入れやすいです。
反対に、避けたいのは決算直前の時期での税理士の変更です。
期中の処理や決算に向けて準備を進めている状態での変更は、次の税理士への引継ぎ作業が大変ですし、決算直前期は繁忙期にあたるため新たに依頼する税理士に受け入れてもらえない可能性があります。
そのため、決算日前の3ヶ月間の税理士変更は避けるのがベターです。
税務調査が入り、修正申告を終えたあとも変更に適したタイミングと言えます。
一般的に、税務調査は3年に一度ほどの頻度で入ります。
そのため、調査・修正申告を終えてから変更することで、次の調査時に前の税理士に確認作業をする手間を省くことができます。
また、次回以降の調査について次の税理士としっかりと対策を考えた上で挑むことができます。
反対に税務調査が入る予定があるにも関わらず税理士を変更してしまうと、税務調査に対応してくれる税理士を探す作業が大変になります。
そのため税務調査が入ることが明らかな場合は、前述した決算終了後ではなく、税務調査・修正申告を終えるまで待ったほうが良いでしょう。
多くの税理士にとって、忙しい時期は年末調整のある12月~翌年1月、個人事業主の確定申告作業がある2月~3月、3月決算の企業の決算申告作業がある4~5月と言われています。
そのため12月~5月は繁忙期、反対に6~11月は閑散期であると言えます。
受け持つクライアントが法人か個人かどうか、税理士の人数や人員配置などにもよるため、一概に全ての税理士事務所・税理士法人がそうとは言えませんが、一般的にはこのように考えて良いでしょう。
税理士を変更するにあたって、新たに依頼する税理士への業務引継ぎには時間を要します。そのため、繁忙期の場合、手が回らないために引継ぎ作業が難しくなったり、スムーズに進まなかったりすることも多く、依頼したい税理士に断られてしまう可能性があります。
そこで12月~5月頃の繁忙期は避け、比較的落ち着いている6月~11月頃に新しい税理士に依頼するとスムーズに進むことが期待できます。
税理士を変更したいと感じる理由は様々ですが、主な理由としては以下が挙げられます。
・対応が悪い、対応が不十分
・レスポンスが遅い
・能力・実力が足りていない
・うまくコミュニケーションが取れない
・経営者と相性が合わない
・期待する節税効果が得られない
・報酬が割に合わない
できれば上に挙げたようなタイミングで変更を行いたいところですが、無理に一定の時期を待っていたのでは業務に支障をきたす場合もあります。対応が悪かったり実力不足と感じたりする税理士の場合、決算申告作業や税務調査を任せるのも、不安に感じるでしょう。
無理に合わない税理士と契約を続ける必要もありませんので、税理士変更の検討は「税理士を変えたい」と思ったそのときから始めても良いでしょう。不満を強く感じているのであれば、思い切って変更したい旨を伝えてみましょう。
税理士を変更するには、新しい税理士との契約や、預けていた資料の回収、引継ぎ作業など、想像以上に時間を要するものです。税理士の変更を考えている場合は、ここで紹介したタイミングを参考にしながら、慎重に社内でよく検討し、信頼できる新たなパートナーと顧問契約を結びましょう。
個人事業主や副業での収入を得ている方、その他一般的な給与所得者以外は確定申告を自ら行うのが一般的です。税務署に確定申告書を提出し、これをもって所得税額を確定。納税を行うという流れに沿います。
そして確定申告をする方法には大きく「青色申告」と「白色申告」の2種があります。どちらもよく耳にするものではありますが、実際どのような違いがあるのか理解していないという方も多いのではないでしょうか。
そこで、青色申告と白色申告について理解ができるよう簡単にメリット・デメリットを挙げていこうと思います。
まずは青色申告についてですが、これは正規の簿記の原則に従い記帳、申告をすることを指します。青色申告をするためには特定条件を満たした形での記帳が必要ですし、前提として所定の手続を行う必要があります。
具体的なメリット・デメリットについては以下の通りです。
青色申告を行うことのメリットを端的に言うと「納税額が下げられる」という点にあります。
特別控除の適用 | 「青色申告特別控除」として、最大65万円の控除が適用できる 最大額を適用するには、複式簿記での記帳+電子申告が必要 複式簿記での記帳+電子申告以外で提出なら55万円の控除 単式簿記での記帳なら10万円の控除 |
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専従者給与の形状 | 「青色申告専従者給与」として、事業主の家族や親族に対する給与を全額経費に計上することができる |
損失の繰越 | 赤字になっても、その損失分は次年度以降3年にわたり繰越すことができる |
青色申告を行うことのデメリットは「手続の手間が大きい」ということです。
第一に、開業届の提出が必要ですし、青色申告事業者であることを示すため「青色申告承認申請書」を税務署に提出しなければなりません。
第二に、確定申告にあたっての提出書類が確定申告書B・青色申告決算書・貸借対照表・損益計算書などと増え、各書類の作成などに時間と労力を要します。
第三に、税制上の恩恵を最大化しようとすると日常的な経理事務の負担が増す、ということが挙げられます。単式簿記であれば貸借対照表や損益計算書の作成は不要となるのですが、そうすると結局青色申告特別控除の額が10万円にしかなりません。また、専従者に対する給与を全額経費に計上するには一定時期までに「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署に提出しなければならず、相場を考慮した給与額の設定なども行わなければなりません。
そのため事業主自身が税制に詳しい、あるいは従業員に経理がいる、という場合でなければ本業を圧迫するおそれがあります。ただしそのような場合でも、税理士に依頼をすることで税額控除等のメリットを受けつつデメリットを最小限に留めることは可能です。
白色申告は、青色申告以外の確定申告の方法です。
青色申告に係る届出などをしていない場合には、白色申告を行うものとして扱われます。
白色申告であることのメリット・デメリットは以下の通りです。
白色申告であることのメリットは、確定申告にあたって事前の届出が不要であるということ、そして確定申告の際に提出すべき書類が少なくて済むということが挙げられます。提出すべきは確定申告書と収支内訳書です。記帳方法も単式簿記で良いです。
また、青色申告ほど面倒な手続をしなくても一定の限度内で専従者給与を経費に計上することは可能です。配偶者なら86万円まで、その他の親族でも50万円までなら計上可能です。もとよりこの金額以下での給与を考えているのであれば、(専従者給与に限って言えば)青色申告である必要はないと言えます。
日常的な経理事務に関しても負担が少なくて済みます。
白色申告のデメリットは、青色申告のメリットの裏返しとなります。
つまり税制上の優遇措置が受けられないという点がデメリットです。青色申告特別控除の適用は納税額を大きく左右するものですし、専従者給与についても、専従者自身を非課税の枠内で納めても100万円ほどの節税効果が得られます。
確かに白色申告であれば楽に事務作業が済ませられますが、今後も継続的に確定申告を行うのであれば青色申告にしておくことが推奨されます。毎年同じ作業ですので慣れてしまえば負担は小さくなっていきますし、税理士など外部に委託をすることで手間を省くことも可能です。委託先に支払う以上の節税効果も期待できますので、一度検討してみると良いでしょう。
所得税に関わる手続として代表的なものに「確定申告」と「年末調整」があります。どちらも一般に聞き馴染みのある言葉です。しかしそれぞれの違いがよくわかっていない、具体的に何をする手続なのか知らない、という方も多いのではないでしょうか。
この記事で確定申告と年末調整について解説し、両者の違いを比較していきますので参考にしていただければと思います。
所得税は所得の大きさに応じて課税されるところ、各人がどれほどの所得を得ているのかを国が把握して自動的に課税されるわけではありません。
各人が所得について申告を行い、その自己申告に基づいて所得税の課税がなされているのです。これを申告納税制度と呼び、自分で所得や控除の適用などを行い、自分で納税額を計算する仕組みが採用されています。
1月1日から12月31日までの1年間を区切りとし、翌年の2月16日から3月15日に申告を行うのが基本です。計算された所得税額は確定申告書に記載し、税務署に提出して完了となります。
なお、確定申告は「青色申告」と「白色申告」の2パターンがあります。
青色申告 | 白色申告 |
---|---|
・一定要件を満たす形で記帳を行っている場合の確定申告
・事前に開業届と青色申告承認申請書の提出が必要 ・作成すべき帳簿、保存すべき帳簿が多いため白色に比べて申告者の負担は大きくなる ・白色申告に比べて利用できる控除制度が増える |
・青色申告をする者以外がする確定申告のこと
・白色申告をするために、開業手続やその他書類の提出などは必要ない ・青色申告に比べて、申告に要する手間が少ない ・青色申告に比べて使える控除が少ないため、税制上のメリットは小さくなる |
年末調整を理解する上では、源泉徴収についても知る必要があります。源泉徴収とは、1年間の納税額につき、従業員を雇用する会社等が給与から天引きして金銭を徴収すること言います。つまり納めるべき税を予想し、その分を先払いするための仕組みです。
しかし実際に1年間働いた結果、徴収された額がぴったり本来の納税額と一致するとは限りません。そのため本来の納税額が確定できる年末においてずれを修正することになるのです。これが年末調整です。本当の納税額より多くこれまで徴収してきたのであれば差額が還付され、逆に徴収額が少なかったのであれば差額分をさらに徴収することになります。
確定申告と年末調整の違いを整理すると下表のようになります。
確定申告 | 年末調整 | |
---|---|---|
対象となる人 | ・確定申告が必要になる人の代表例は個人事業主や年金受給者など
・従業員として働いていても、副業で所得を得ているなら確定申告が必要になる ・その他にも、株取引や不動産取引で所得を得ている人や賞金等で一時所得がある人、退職金等の所得がある人も対象 |
・年末調整が必要になるのは会社等に勤める従業員であって、残業や手当代などにより給与額の変動があった場合など
・寄附金控除等を利用する場合には基本的に確定申告が必要になるが、ふるさと納税に関しては5つの自治体までは一定の手続を経た上で確定申告は不要になる |
手続を行う人 | 納税者自身
※税理士に依頼して手続をしてもらうことも可能 |
納税者を雇用する会社等 |
利用可能な控除 | 確定申告では右の控除に加え、さらに以下の控除も利用可能
・医療費控除 ・寄附金控除 ・雑損控除 |
以下の控除が使える
・基礎控除 ・配偶者控除(および配偶者特別控除) ・扶養控除 ・社会保険料控除 ・障害者控除 ・ひとり親控除 ・勤労学生控除 ・生命保険料控除 ・地震保険料控除 ・小規模企業共済等掛金控除 ・寡婦控除 ・住宅借入金等特別控除 |
初めて確定申告する場合、「どのような手順で行えばいいのかわからない」という方も多いのではないでしょうか。
そのような不安を抱える方に向けて、ここで確定申告の手続きの流れを4ステップに分けて解説していきます。
最初のステップとして、確定申告を行うにあたって必要な書類を確認し、用意しましょう。
確定申告を行うすべての人に共通して必要なものが「確定申告書」です。
以前は確定申告書にはAとBの二種類あり、所得の種類によって提出する様式が異なりましたが、令和4年度分の申告から様式Aは廃止され、様式Bのみになりました。
そのため、これまで様式Aを使って申告していた方も令和4年度以降は様式Bを使用して申告しなければいけません。
申告書の用紙は、税務署で入手できる他、国税庁のウェブサイトからダウンロードもできます。
確定申告書を用意したら、次に、「申告する所得を証明できるもの」を用意します。
例えば、給与所得を受けている方であれば源泉徴収票、青色申告であれば青色申告決算書、白色申告であれば収支内訳書がこれに該当します。それぞれご自身の申告内容に合わせて書類を用意します。
さらに、「所得控除の適用を証明できるもの」も必要です。
社会保険料控除であれば「社会保険料控除証明書」、医療費控除であれば「医療費控除の明細書」や医療費の通知書や領収書も手元に揃えておきましょう。
また、必要に応じてその他の書類の用意が必要になるケースもあるため、事前にしっかりと確認しておきましょう。
すべての書類を用意できれば、確定申告書に必要事項を記入していきます。
記入にあたっては、税務署のウェブサイトで閲覧できる「確定申告書の作成手引き」を参考にすると良いでしょう。
必要事項を全て記入し、所得金額を算出できたら確定申告書の完成です。
記入が難しい場合や、確実に正確な申告を行いたい場合などは、税理士や会計士などの専門家に依頼することも検討しましょう。
確定申告書が完成したら、記入漏れはないか、添付漏れはないかなど、きちんと確認した上で提出をしましょう。
申告書の提出期限は例年3月15日ですが、異なる可能性もあるため事前に必ず確認してください。
提出方法としては以下の3通りがあります。ご自身に合った方法を選択しましょう。
提出方法の1つに「申告書を税務署の窓口に直接出す」という方法があります。
税務署の開庁日および開庁時間については、平日の8時30分から17時までが基本となっていますが、税務署によって異なる場合や、土曜日や日曜日にも開庁している場合があります。税務署のウェブサイト等で事前に確認することをおすすめします。
なお、確定申告の時期だと税務署は混雑している可能性があるため、時間に余裕を持って行くことが大切です。
「税務署へ申告書を郵送する」という方法もあります。
税務署の窓口へ直接出向く必要がないため、時間や交通費を節約できる点がこの方法の良いところです。税務署まで距離がある方や開庁時間に行けない方にとって便利な方法と言えます。
なお、確定申告書は「信書」に当たるため、「郵便」または「信書便」で送付する必要があります。
ゆうパックやゆうメールなどでは送付できないことに注意してください。送付する際は「簡易書留」や「特定記録郵便」を利用すると、送達状況が把握できて安心です。
最後に「e-Taxを利用して電子申告する」という方法を紹介します。
国税庁のウェブサイトからe-Taxにアクセスすることで、申告書を送信できます。
申告書を印刷したり郵送手続きをしたりする手間を省けるため、手続きがスムーズに進みます。
また、自宅や事業所のどこからでも24時間手続きができるのは利点です。
ただし、e-Taxによって申告を行うは、マイナンバーカードやICカードリーダーが必要になります。この方法で申告を行いたい方は、事前に揃えておかないといけません。
なお、青色申告の場合はe-Taxによる申告をすることで「青色申告特別控除」を最大の65万円適用することができます。
青色申告で65万円控除を受けたいという方は、その他の要件も全てクリアした上でこの方法を選択することをおすすめします。前述した申告書を税務署の窓口へ提出する方法や郵送する方法では65万円控除を受けることができないため注意が必要です。
確定申告によって算出された所得税を納付します。または、還付される金額がある場合には還付金を受け取ります。
納付する税額がある場合には、納付期限までに納付を行います。
所得税の納付期限は、確定申告の提出期限と同様、例年3月15日です。
納付方法としては、税務署や金融機関などの窓口で納付する方法や、ATMやインターネットバンキングを利用する方法、クレジットカードを利用する方法などがあります。
還付される税額がある場合には、申告書の提出から3週間~6週間程度で還付金が振り込まれます。
ただし、申告書の内容に誤りがあった場合などは、6週間以上かかる可能性もあります。
確定申告書の「還付される税金の受取場所」という欄に記入した口座へ振り込まれます。
なお、指定できるのは申告書を提出する本人名義の口座のみであるため、記入する際は注意が必要です。
以上が、一般的な確定申告の手続きの流れです。申告する内容によっては手続きが複雑になるケースもあるため、詳細は税務署や税理士に相談すると良いです。
また、申告が初めての場合は申告書の用意や作成に時間がかかってしまう可能性もあります。時間に余裕をもって取り組みましょう。
「相談先・依頼先として契約している税理士を変更したい」「顧問税理士を変えたい」とお悩みの方もいるのではないでしょうか。変更したい旨を伝えにくい、具体的にどのような手順を踏んで変更すれば良いのかわからない、という方も少なくないと思います。
この記事で税理士を変更する流れについて解説していきますので、手順を知りたい方・トラブルなく変更したい方はぜひ参考にしてください。
税理士の変更を検討し始めたなら、まずは現在の税理士と交わした契約書を見直しましょう。
契約書に記載の、解約に関する条項をチェックするのです。ここでのポイントは、「いつまでに解約の申し出をしなければならないのか」ということです。「契約期間満了日の3ヶ月前までに、双方より意思表示がない限り、契約を自動更新する。」といった条項が設けられていることがあるからです。
こうしたケースにおいて、満了日の1ヶ月前に解約の連絡をしても、相手方からその日付での解約は認められないと主張される可能性があります。そのため前もって解約通知の期限は確認しておき、スムーズに解約できないという事態を避けられるようにしましょう。ただ、自動更新期間ではあっても相手方の合意があれば解約はできますし、その時点の合意あるいは契約に基づく違約金の支払いによって解約をすることも可能です。
自動更新等の問題がなかったとしても、すぐに解約の申し入れをするのは避けた方が良いです。新たな依頼先となる税理士を探してからにしましょう。すぐに新しい税理士が見つかるとは限りませんし、引継ぎにも時間がかかります。その間、税務調査を受けたり税務上の問題が生じたりするおそれもあります。
そこで、契約書で解約に関する事項を確認したら、次は税理士探しを始めましょう。
新たに税理士を探す場合以下のポイントを押さえておくと良いです。
新しく依頼する税理士が見つかれば、現在の税理士に対し解約したい旨を伝えましょう。
ただ、その際には角が立たないように注意しましょう。伝え方やその相手方によっては、解約に伴う書類回収が滞るなどの問題が生じ得ます。
そこで円満に解約できるよう、感情的になることなく連絡を取りましょう。
「知人(あるいは親戚)が税理士事務所を開いたから」という理由は解約にあたっての決まり文句として使えますし、角も立ちにくいです。
無事解約へと進めることができれば、引継ぎのためにも、税理士に預けていた書類およびデータを回収しましょう。これが税理士変更における重要なポイントとなります。
トラブルを避けるため、回収に係る連絡も丁寧に行いましょう。
データの回収をスムーズに行うためには、事前に、契約書に回収すべきデータの引渡し方法なども明記しておくと良いです。
なお、回収の申し入れになかなか対応してもらえないときには、税理士会に苦情相談をしましょう。
回収すべき書類・データの具体例を以下に示します。
e-Tax関連の情報の取扱いにも留意しましょう。登録メールアドレスの変更や暗証番号の変更、メッセージボックスの転送設定など、セキュリティ上のリスクが生じないように調整しましょう。
書類等の回収ができていれば引き継ぎもスムーズにできます。新たな契約内容に応じ、税理士から指定を受けた書類等を提出しましょう。
形式上は新たな税理士との「契約日」と「業務開始日」は一致することが多いですが、実際は業務の開始に先立って契約を締結させて引継ぎ等を行う例が多いです。
細かくは各税理士によって段取りが異なりますので、移行時期は密にコミュニケーションを取り問題が生じないようにしましょう。
会社形態としてもっともメジャーなのは「株式会社」です。設立数も多く、一般にも広く知られていると言えます。
他方で、「合同会社」も近年設立数を伸ばしている会社形態です。徐々に知名度も増してきています。
そこで会社を設立する際、株式会社にしようかそれとも合同会社にしようか、と悩むこともあるでしょう。この記事でそれぞれの違いを整理していきますので、参考にしていただければと思います。
潤沢な資金を備えていないのであれば、会社を設立するための費用が気になるところかと思います。
昔と違って、資本金の額に下限はありませんので比較的設立をしやすくなったと言えますが、1人会社としての設立・スモールビジネスの立ち上げといったケースでは数万円を大きな差と感じることもあるでしょう。
結論から言うと、株式会社のほうがやや設立費用は高くなります。
その理由としては大きく2つ、①定款の認証の必要性、②設立登記に要する登録免許税、が挙げられます。
どちらの会社形態であっても定款自体が必要である点違いはありません。しかし株式会社の場合には公証役場にて認証手続を経なければなりません。そしてその手続に際して、公証人に対し手数料を支払わなければならないのです。
ただ、近年この手数料につき改定がなされており、株式会社における負担が小さくなっています。かつて手数料は「5万円」と設定されていたのですが、執筆時点(2022年6月時点)では以下のように設定されています。
※2022年4年1月1日からこの手数料額が適用されている
こちらも参照してみると良いでしょう。
https://www.koshonin.gr.jp/business/b07_4/q07_4_03
また、会社は各種手続を済ませ、最後に設立登記をしなければなりません。これをもって会社成立となるからです。
ただ、ここでも費用が発生します。資本金の額に応じた登録免許税を支払わなければなりません。株式会社も合同会社も資本金の額に0.7%を乗じた額であるため同額になるケースが多いのですが、「株式会社では最低額15万円」「合同会社では最低額6万円」と差が出ることもあります。
株式会社では会社の所有者と経営者が分離しています。小規模の会社であれば一致することもありますが、株式会社ではこれが一致しないことも想定されています。株式が公開されていると経営に直接携わらない社員(株主)が増えてきますが、これを許すことでより資金調達を容易にすることができ、ビジネスの拡大が狙いやすくなっているのです。
これに対し合同会社では所有と経営が一致しています。経営者を社員以外から選任することはできません。そのため会社全体の一体感は増しますが、結果として、広く資金調達を行うことは難しくなります。
株式会社の場合、社員が会社を代表するわけではありません。各取締役が会社を代表します。
※代表取締役を定めることもできる
これに対し合同会社では前項の通り所有と経営が一致しており、各社員がその会社の経営者でもあり、代表にもなります。
※代表社員を定めることもできる
株式会社の経営者である取締役は、任期が原則として「2年」と法律で定められています。あくまで取締役は会社から委任されて経営という仕事をしている人物なのであり、会社の所有者ではないからです。期間を限定して会社の経営権を持たせることにより強い支配力がいつまでも維持できないようにしているのです。
ただし株式の譲渡制限を定款で設けている場合には「10年」まで任期を伸ばすことが認められています。また、監査役に関しては取締役の見張り役として働くことになるため、取締役よりも長い「4年」が原則の任期とされています(株式の譲渡制限があるなら「10年」まで伸長可能)。
他方、合同会社では所有と経営が一致している関係から、経営者である社員に任期もありません。
株式会社には公告の義務があります。株主や債権者などの利害関係者に対しお知らせをするための手続です。
決算に関しても毎年行う必要があります。
これに対し合同会社では公告が不要です。定款に定めることも可能ですが、定めなくても何ら問題はありません。
社会的なイメージ・信用度については、ルール・制度的な違いではありませんが、無視することができない要素です。
会社として事業を行っていくためには取引の相手方からある程度信用を得ていなければならないからです。信用がされていないと、たとえ優れたサービスや品物が提供できるとしても、取引ができず利益を出すことができません。
株式会社・合同会社の違いだけで大きな差がつくわけではありませんが、特に一般消費者からすると聞きなれない社名に対し警戒心を持つ可能性があります。株式会社なら聞き馴染みがある一方、合同会社だと知名度という点でやや劣ってしまいます。
最近では合同会社という名称も周知されてきましたが、自社サービス等の内容を鑑みて検討する必要があるでしょう。
細かなルールの違いはいろいろありますが、大雑把に言うと「家族経営などで、スモールビジネスを始める場合に適しているのが合同会社」「多くの資金を集めて大きな規模に事業を展開するのに適しているのが株式会社」と言えるでしょう。
合同会社なら少ない費用で設立ができ、経営も比較的自由に行うことができます。
これに対し株式会社は経営者に法令上の制約がかけられ、厳格なルールの下運営をしていく必要があります。株主との関係にも配慮しなければなりません。しかし広く投資を受けることができ、大きな資金力を得やすいという良さも持っているのです。
所得のある方の多くには確定申告の義務が生じます。サラリーマンの方など、直接申告作業をする必要のないケースもありますが、納税はしているのであり各人の所得につき確定申告は行われています。
当たり前のように毎年確定申告が行われていますが、その意味を考えたことはありますでしょうか。確定申告の義務が生じる要件、申告の方法など詳しく理解している方はそれほど多くないのが実情でしょう。ここで確定申告について解説し、節税の観点から重要となる「青色申告」と「白色申告」の違いについても言及していきます。
そもそも「確定申告」とは、1月1日~12月31日の1年間に発生したすべての所得等の金額を国に申告することを言います。そこから所得税等の額を算出することで、源泉徴収された税金などの過不足を精算する手続でもあります。
確定申告が必要になる方は、大きく以下4つのパターンに分けられます。下表のいずれかのパターンにあてはまるときには所得税につき確定申告をしなければなりません。
給与所得がある方 |
この時点で残額があり、給与のすべてが源泉徴収の対象であって所得金額の合計が20万円を超える、など所定の事由に該当する場合に申告義務が生ずる。 ※なお、多くの方は年末調整で所得税等が精算されるため申告は不要 |
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公的年金等に係る雑所得のみの方 | 雑所得の額から所得控除を差し引き、残額がある場合に申告義務あり
※なお、公的年金等の収入額が400万円以下で、かつ、そのすべて源泉徴収の対象である場合、申告は必要ない |
退職所得がある方 | 外国企業から退職金を受け取っているなど、源泉徴収されない所得がある場合に申告義務あり |
1から3以外の方 |
この時点で残額がある場合、申告義務が生ずる ※なお、公的年金等の収入額が400万円以下で、かつ、そのすべてが源泉徴収の対象になる場合、公的年金等に係る雑所得以外の所得が20万円以下であるなら、確定申告の必要はない |
「青色申告」とは、一定の水準で記帳を行い、正しい申告をすることで税制上の特典を受けることができるという「青色申告制度」に基づく申告方法のことです。
原則として複式簿記での帳簿をしなければならず、申告義務者に一定の負担はかかりますが、控除の額が増えるなどの恩恵が得られます。
これに対し「白色申告」は簡易帳簿に基づく申告方法のことです。帳簿付けが簡単である反面、節税効果は小さくなります。
こうして比較すると青色申告と白色申告は一長一短で、どちらを選択しても問題ないように思えるかもしれません。しかしそれぞれで得られるメリットにつき慎重に検討することが大切です。青色申告で得られる節税効果はかなり大きく、実際、多くの方が青色申告を選択しています。
具体的な違いを以下に挙げていきます。
青色申告を選択した方全員が共通して利用できる控除が「青色申告特別控除」です。所得の計算にあたり、最大65万円を差し引くことが可能となります。
確定申告書を期限までに提出するなど基本的な要件を満たすことで55万円を差し引くことができ、「e-Taxによる電子申告」または「電子帳簿保存を行っている」場合には65万円を差し引くことができます。
電子申告等への対応は面倒に感じるかもしれませんが、今後電子申告、オンライン手続が利用される機会は増えていくと見られます。早期に対応しておき、節税効果も高めておくと良いでしょう。
なお、白色申告ではこの特別控除は一切適用されません。
青色申告の場合、一緒に暮らしているなど、生計を一にしている配偶者・その他親族を従業員としている場合、その給与を原則として全額必要経費に計上できます。
他方、白色申告では専従者1人につき最高50万円(配偶者については86万円)までが限度となっています。それ以上の給与を与えても節税の効果は得られません。
なお、青色申告であっても給与額の設定には十分留意しなければなりません。必要以上に大きな給与を与え、不当な節税効果を得ようとしないようにしましょう。従事した期間や労務の性質、同種の事業における相場などと照らし合わせて、相当と認められなければなりません。
また、この特典を受けるには所轄の税務署長に対し届出書を行っていなければなりません。
青色申告の方は、事業により生じた純損失を3年に渡り繰越すことが認められています。ある年の純損失を別の年の所得金額から差し引くことができ、事業継続性を保ちやすくなります。
さらに、繰越しではなく、その損失額を前年の所得金額に繰戻して控除することも認められています。これにより前年分の所得税額の還付を受けることもできるのです。
他方、白色申告の場合繰戻しはできません。繰越しに関しては被災事業用資産の損失などに限って可能ですが、基本的にはできません。
具体例で節税効果の比較をしてみましょう。なお、具体的な金額は法改正などにより変動することがあります。以下で示す内容はおおよその節税効果を把握するにとどまるということに留意して見ていきましょう。
600万円の事業利益があり、その他以下の控除が利用できるケースを考えてみましょう。
白色申告だと、各控除を利益から差し引いて税額を計算すると、「所得税」「復興特別所得税」「事業税」「住民税」の合計は1,128,700円になります。
これに対し青色申告だと、青色申告特別控除で最大65万円の控除が利用でき、税金の合計は930,900円となります。白色申告と比べると10万円近く納める金額が下がります。
上の事例において、配偶者等の事業専従者がいるケース考えてみましょう。利益や各控除額は同じとし、青色事業専従者給与は120万円とします。
白色申告だと事業専従者控除の限度が86万円ですので、税額の合計は934,700円になります。
これに対し青色申告では120万円満額を利益から差し引くことができ、税額の合計は636,900円になります。また配偶者の税負担は発生するため、本人と配偶者合わせると670,000円になります。白色申告と比べると約26万円の節税効果が得られます。
税額の計算、申告の作業、日々の帳簿付け、節税対策などは最新の税制をすべて理解していることが大切です。また、確定申告の時期に焦って対応していると大きな労力を要しますしミスも発生しやすくなってしまいますので、これらの作業は税理士に対応してもらうと良いでしょう。
会社を設立するなら「定款」を作成しなければなりません。単なる会社のルールとして機能するだけでなく、その記載内容によって会社の形態が決まりますし、なによりこれを欠いて会社設立することは不可能だからです。
そこでこの記事では、会社設立をする場合どのようにして定款を作成することになるのか、どのような要件があるのか、といった内容を解説します。
有効に会社設立をするためには、定款作成にあたってすべきこと、記載すべきことがいくつかあります。以下の要点を抑えておきましょう。
定款の記載事項として特に重要な「絶対的記載事項」というものがあります。
例えば会社の「目的」や「商号」、「本店所在地」、「設立時に出資される財産の価額またはその最低額」「発起人の氏名または名称および住所」です。
これら絶対的記載事項を欠いた定款は効力をなしません。
特に「設立時に出資される財産の価額またはその最低額」と「発起人の氏名または名称および住所」に関しては、設立時にのみ考慮する事項です。
また「発行可能株式総数」についても定める必要がありますが、これは原始定款作成の段階で定められている必要はありません。なぜなら、設立過程で株式の引受けや失権の状況が変わることがあるからです。状況を見つつ、適切な数を定めたほうが良いという理由です。
そこで、最低限、会社設立が完了する時までに定款に記載されていれば良いとされています。
法改正によって徐々に柔軟化されており、会社設立の自由度は高まりつつあります。例えば公告方法に関してもかつては絶対的記載事項とされていましたが、今では相対的記載事項として、必ずしも定めを置く必要はなくなっています(定めなければ「官報」が公告方法になる)。
なお、「定時株主総会の開催月」「事業年度の定め」などは任意的記載事項であり、定款への記載がなくても問題はありません。
株主総会や取締役、監査役といった機関の設計も行います。
といっても発起人が完全に好き勝手設計できるものではなく、会社法に背かない範囲で設計していくことになります。例えば株主総会を設けないことはできませんし、取締役がいない株式会社も存在しません。
よくある例としては、以下の機関を設けた会社です。
会社の規模を考慮して、専門家の意見も取り入れつつ検討することが大事です。
適切な形で定款の中身が作られたとして、その定款に対しては「発起人の全員の署名」または「発起人全員の記名押印」がなければなりません。
必要な事項を記載し、発起人による署名等が付された定款は、公証人による「認証」を受けることでようやく効力を生じます。
そこで、会社の本店所在地を管轄する法務局(または地方法務局)にて、公証人の認証を受けましょう。
定款の中身は会社によって様々です。
しかし実際のところ、共通している項目も多いです。
特に上場企業では公開準備に伴い定款の見直しを行うことになり、上場の要件を満たすように見直されるため、似たような形となっているケースが多いです。
各証券代行機関は全国株懇連合会の雛型を参考にモデル定款を作成する例が多いため、参考にする場合は全国株懇連合会の雛型を確認してみると良いでしょう。
また、近年の定款はボリュームが縮小する傾向にあります。
株式の取扱いなどの事務的な事柄、取締役会の運営など自治の問題などは定款に定めず、「株式取扱規則」「取締役会規則」に委ねるケースが多いです。
※株式取扱規程:定款からの授権に基づき、株主権行使に関することなどをまとめたもの
※取締役会規則:招集権の定め、開催の頻度など、取締役会に関するルールを成文化したもの
株主総会、取締役および取締役会、監査役から構成される株式会社の場合、通常、以下のように定款が章立てされます。
ただし、「大会社かどうか」「公開会社かどうか」によって章立てや内容が大きく変わります。
例えば、大会社かつ公開会社であれば、総則の章において取締役会と監査役に加え監査役会と会計監査人を置く旨規定します。
大会社かつ非公開会社でも基本的な部分は同じですが、株式に関する、単元株式・単元未満株主の権利・株主名簿管理人・振替制度などの事項は大きく異なります。公開会社に比べて株主の移動が少ないという前提があるからです。
他方で、大多数を占める株式会社は中小会社かつ非公開会社です。
このとき、監査役の権限を会計に関するものに限定することも考えられます。ただしこの場合、取締役に対し、取締役の同意または取締役会決議による責任刑減の制度が適用されなくなることには注意が必要です。
定款は会社設立後に変更することも可能です。そのため事業の進捗に合わせ、変動することを見越した定款の内容にすることも可能です。
ただし、定款の変更は簡単にできることではないため要注意です。
まず、原則として定款変更では「株主総会での特別決議」を経る必要があることは理解しておきましょう。
普通決議であれば株主の半数ほどから同意が得られていれば足りるところ、特別決議の場合には2/3以上の同意が必要です(厳密な要件は要確認)。
そのため後から変更をしようと考えても、もはや発起人の考えだけで変更することはできないのです。
また、定款変更には株主の意思を反映させることが重要であるため、株主総会以外の機関や第三者に定款変更を委任することもできません。具体的内容まで株主総会で決める必要があり、「大枠のみを株主総会で決め、細目は取締役会に委任する」といったことも通常認められません。
基本的には定款変更手続きとして特別決議が必要ですが、例外もあります。
変更する内容に応じて、さらに厳格な要件が求められることもあれば、逆に株主総会決議が不要なケースもあるのです。
例えば、定款の記載方法を横書きから縦書きに変更するだけであれば「形式的意義の定款変更」として、株主総会は不要です。
しかしながら、条文の配列、句読点の打ち方、使用する漢字、送り仮名の変更など、字句の変更を行う場合には「実質的意義の定款変更」にあたる可能性があり、そうすると株主総会を省略することはできません。字句の変更に対しどのように扱うべきなのかは判断が難しいです。
任意的記載事項はもちろん、原則として絶対的記載事項や相対的記載事項などいずれも自由に変更することができます。
ただし、強行法規や公序良俗に背く内容は無効ですし、株式会社の本質に適合しない内容、株主平等原則に反する内容も無効になると考えられています。
そのため、法令上特定事項につき変更が禁止されている旨明記されていなくても、すべてが自由に記載できるわけではない点注意しましょう。
なお、過去には「取締役等の資格を日本国籍保持者に限る」旨の定款を有効と判断した判例があります。私法的自治の範疇であり公序良俗に反しない、外国人に対する不合理で差別的な取扱いでもないと判示されたのです。ただ、これは昭和46年における判例であり、現代のグローバルな環境下にまで絶対的に適用される規範とまでは言い切れません。
この判例のみならず、過去の事例を参考にしてグレーな事項を定めても、判例が変更される可能性はありますのでこの点も注意が必要でしょう。
ここで説明した通り、定款にも相場がありますので、書き方で悩んでいる方は他社の定款やひな形を参考にしてみると良いでしょう。
その際は、自社の機関設計に合ったものとすること、また将来起こり得る定款変更の可能性にも意識を向けることが大切です。
困ったときには、会社設立に強い専門家への相談をおすすめします。
会社設立とは、法人たる営利社団を設立することをいいます。したがって、0から起業する場合以外にも、個人事業主が法人化する場合も会社設立に含まれているといえます。
例えば、事業主体を個人から法人に変えることで、一般に、社会的な信用が担保されるため、取引相手やその内容の幅・規模を拡大することが期待できます。また、優秀な人材の雇用や資金繰り、節税、融資制度の利用、といった様々な点においてメリットがあります。
■会社を設立するには
会社の設立は、商号や事業目的、発行株式数、資本金、設立時役員等といった会社の基礎となる事項の策定から開始します。基本事項を決定したら、定款作成や創立総会等を経て、最終的には設立登記によって会社が成立します。
会社設立の過程では、各種手続きにおいて登録免許税や公証人手数料、収入印紙代といった費用がかかります。これらを合わせると、株式会社なら最低で約24万円、合同会社なら最低6万円程度が必要となります。
後藤允良税理士事務所では、横浜市、川崎市、大田区を中心に、神奈川県、東京都の地域で、会社設立、起業支援に関するご相談を承っております。お悩みの際には当事務所までご相談ください。