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企業が作成する税務書類の種類と作成の実務について

企業が活動を続ける中で、税務書類の作成は避けて通れない重要な業務です。

具体的な業務内容は企業の活動内容や規模によっても異なりますが、当記事では多くの企業に関わる主な税務書類を取り上げています。また、税務書類作成につながる実務に関してもご紹介します。

主な税務書類

税務書類にも多くの分類があります。例えば税務署に提出することが求められている各種申請書や届出書、従業員からの源泉徴収について記載した源泉徴収票、日々の取引を記載した帳簿書類、そしてこれらの業務の集大成ともいえる決算書や税務申告書などです。

各種税務書類について概要を掴んでおきましょう。

源泉徴収票

「源泉徴収票」とは、従業員の給与から源泉徴収した税額などを記載した書類のことです。

毎年、12月に行う年末調整が終わってから、1月ころには作成を行います。その際は、まず年間の給与支払額と源泉徴収税額を集計。そして年末調整の結果を反映し、所定の様式に従って記入を進めていきます。

各種申請書・届出書

税務署に何かを申請したり、届け出たりする場合に提出する書類もたくさんあります。そのすべてが義務として課されているわけではなく、任意で提出するものもたくさんあります。

例えば「青色申告承認申請書」は青色申告を行うための申請書ですが、すべての企業に提出が義務付けられているわけではありません。
ただし、青色申告による税務上の特典を受けるためにもできるだけ申請しておきたい手続きでもあります。

このように、任意ではあるものの恩恵を受けるため多くの企業が手続きを行っているケースもありますのでご留意ください。あらかじめ申請・届出をしておいた方が良いかものがあるかどうか、税理士とも相談しながら検討すると良いでしょう。

帳簿書類

収入や支出などを記録するための「帳簿書類」も重要です。

例えば「仕訳帳(取引を仕訳して記録する帳簿)」や「総勘定元帳(仕訳帳を勘定科目ごとに集計した帳簿)」が代表的で、さらに「補助簿(売上帳、仕入帳など特定の取引を記録するための帳簿)」も通常作成することになります。

これらの書類は税務調査の際に提示を求められることもありますし、決算書作成の基礎となる資料でもあるため、正確に作成し、適切に保管しておくことが大事です。

決算書

事業年度ごとに経営状態や財務状況をまとめた「決算書」も特に重要な書類です。以下にその種類をまとめます。

主な決算書
損益計算書 一定期間(通常1年間)における企業の経営成績を表す。
収益、費用、そして最終的な利益(または損失)を具体的な金額で示す。
貸借対照表 特定の時点(決算日)における企業の財政状態を表す。
企業が保有する資産、企業が負っている負債、そして純資産の3つの要素から示す。
株主資本等変動計算書 一定期間における株主資本の変動状況を表す。
企業の資本金、資本剰余金、利益剰余金などから構成され、期首~期末にかけて各要素がどのように増減したのかを示す。
キャッシュフロー計算書 一定期間における企業の現金・預金等の収入と支出を表す。
資金の流れを把握し、財務状態の安定性を分析するために役立つ。

税務申告書

税務書類としてもっとも重要ともいえるものが「税務申告書」です。

例えば法人税申告書(個人の場合なら確定申告書)や消費税申告書など、申告制度を採用している各種税について、納めるべき税額を計算してまとめた書類が該当します。

法人税に関しては事業年度終了翌日から2ヶ月以内に申告しないといけないため、3月決算の企業なら5月末までに法人税申告書を作成し、提出しないといけません。この業務の基本的な流れは次のとおりです。

  1. 年間の収益と費用を集計する
  2. 決算書(貸借対照表、損益計算書等)を作成する
  3. 税務調整を行い、課税所得を算出する
  4. 申告書様式に従って必要事項を記入していく
  5. 申告と併せて法人税を納める

税務書類作成に関わる税務・経理業務

税務書類、とりわけ決算書や申告書を作成するために重要なのは日々の仕訳です。そしてこの日次業務を一定期間おきに整理し(月次業務)、最後に年間の情報を整理していきます(年次業務)。

日次業務

日々の取引の仕訳、現金・預金の管理など、これら「日次業務」はのちの税務書類作成の基礎となりますので丁寧に記録していくことが重要となります。

大量の仕訳を要する企業だとスピードが求められることもあるかもしれませんが、誤った記録をしてしまうとやり直しの作業が発生してしまいますし、税法に違反してしまうケースもあります。そのため正確さが求められる業務といえるでしょう。

また、税法の改正も頻繁に行われているため、最新情報のチェックも欠かせません。

月次業務

日次業務を積み重ね、「月次業務」として月次決算を実施します。法律上の義務ではありませんし、実際これを行っていない企業もたくさんいます。

活動の規模が大きくない、単純な処理が多い、といった場合には無理に行う必要もないでしょう。しかし月次業務を行っていると定期的に振り返りミスにも気づきやすくなりますので、決算期の負担を軽くすることができます。

年次業務

年に1度の決算や申告・納付などが「年次業務」です。

先に決算書類を作成しましょう。そしてこれをもとに税務申告書を作成していきます。ただし企業会計上の処理がそのまま税務会計上の処理に当てはめられるとは限りません。
例えば企業会計でいう「費用」と税務上の「損金」には若干の差があるため、この調整も行う必要があるのです。

会計ソフトを使った実務の流れ

昨今の経理・税務業務は会計ソフトを使って進めるのが一般的です。これを使えばすべての帳簿書類を一つひとつ作成していく必要はありませんし、月次レポートや決算書の作成なども大半は自動作成されます。

以下に、会計ソフトを使用した場合の業務の流れを示します。

日次業務 取引データを、会計ソフトを使って入力していく。
領収書やレシートなどをスキャンし、自動で情報を読み取り仕訳までしてくれる機能を搭載しているケースもある。
オンラインバンキングと連携し、銀行取引に関しても自動で取り込む機能を活用するとより効率的。
月次業務 会計ソフト上で月次決算書を自動生成。銀行口座や売掛金、買掛金の残高を確認して会計ソフト上の数値と一致しているかを確認する。
年次業務 会計ソフト上で各種決算書を自動生成。税務調整を行い、課税所得を算出する。
e-Taxとの連携で、作成した申告書を電子的に提出する。

会計ソフトを効果的に活用することで業務効率は大幅に向上しますし、ペーパーレスやリモートワーク導入にも大きく貢献します。