後藤允良税理士事務所 > 税務に関する記事一覧 > 年末調整の計算方法とは? 所得税額の計算や過不足額の清算をするまでの手順を解説!
「年末調整」は、給与の支払時に源泉徴収した所得税と、納付する所得税との過不足を調整することをいいます。ここでは、具体的にどのように過不足を調整していくのか、年末調整の計算方法について解説していきます。
まず、1月~12月の間に支払った「給与総額」、控除した「社会保険料」、差し引きした「源泉徴収税額」の3つを従業員ごとに集計します。
このとき、賞与もここに含まれることに注意しましょう。
また、12月の給与や賞与については、まだ実際に支払っていないことが予想されるため、見込みの金額で算出します。さらに、その年の途中で入社した従業員については、前の勤め先である会社が発行した源泉徴収票に記載された金額を合算することも忘れてはいけません。
次に、「給与総額」から「給与所得控除額」を差し引いて「給与所得額」を算出します。
なお、給与所得控除額は給与総額によって異なりますので、以下の表に従って算出していきます。
給与等の収入金額 (給与所得の源泉徴収票の支払金額) |
給与所得控除額 |
---|---|
1,625,000円まで | 550,000円 |
1,625,001円~1,800,000円まで | 収入金額×40%-100,000円 |
1,800,001円~3,600,000円まで | 収入金額×30%-80,000円 |
3,600,001円~6,600,000円まで | 収入金額×20%-440,000円 |
6,600,001円~8,500,000円まで | 収入金額×10%-1,100,000円 |
8,500,001円~ | 1,950,000円 |
また、給与総額が660万円未満のときは、所得税法 別表第五「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」に従って算出していきます。
続いて、算出された「給与所得額」から「所得控除額」を差し引いて「課税給与所得額」を算出します。
所得控除には、社会保険料控除や基礎控除、生命保険料控除、地震保険料控除、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除などがあります。
このとき、従業員から提出を受ける「基礎控除申告書」や「保険料控除申告書」、「配偶者控除等申告書」、「扶養控除等申告書」などの書類を基にして算出していきます。
なお、医療費控除や寄付金控除については、年末調整での控除の対象外です。これらの控除を受ける場合は従業員が確定申告を行わなければなりません。
「課税給与所得額」に「所得税率」をかけて、さらにそこから「控除額」を差し引いて、「所得税額」を算出します。
所得税率および控除額については以下の表に従って計算をします。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円~1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円~3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円~6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円~8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円~17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円~39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円以上 | 45% | 4,796,000円 |
例えば、課税所得金額が5,000,000円の場合だと、次の計算により、所得税額は572,500円となります。
所得税額 = 5,000,000円×所得税率0.2-控除額427,500円
= 572,500円
住宅ローン控除を適用する従業員の場合は、「所得税額」から「住宅ローン控除額」を差し引きます。住宅ローン控除は、正式には「住宅借入金等特別控除」といいます。
このとき、従業員から提出された「住宅借入金等特別控除申告書」を基に算出していきます。
なお、ここで控除額を差し引けるのは、2回目以降の住宅ローン控除の場合です。控除を受けるのが1回目の場合は個人で確定申告を行う必要があります。1回目の住宅ローン控除については事業主が手続きできないことに留意しましょう。
算出された「所得税額」に「復興特別所得税」を加えて、最終的な1年間の所得税及び復興特別所得税、つまり「年調年税額」を算出します。
「復興特別所得税」は、東日本大震災からの復興のための財源確保を目的とした税金で、2013年(平成25年)から2037年(令和19年)までの間、2.1%を所得税と併せて納める必要があります。
「所得税額」に102.1%をかけることで年調年税額が算出されます。
最後に、「源泉徴収税額」と「年調年税額」を比較して、過不足額を計算します。
計算した結果、年調年税額が源泉徴収税額よりも多い場合、その差額を従業員から徴収します。
反対に年調年税額が源泉徴収税額よりも少ない場合は、その差額を従業員に還付します。
従業員からの追加徴収または還付によって、過不足額の清算が完了します。過不足額の清算を終えたら、源泉徴収票を発行し、各従業員へ渡します。また、「法定調書合計表」や「給与支払報告書」などの書類を作成し、1月末までに税務署や市町村に提出します。
以上が年末調整における基本的な計算方法・手順です。年末調整は、従業員のいる会社であれば毎年必ず必要になる手続きです。不安な場合や自身のない場合は、国税庁の相談窓口に相談したり、税理士などの専門家に依頼したりすると良いでしょう。