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日本政策金融公庫を利用するメリットや向いている事業者について

日本政策金融公庫は政府系の金融機関で、事業者にとっては資金調達先候補の1つとなります。民間の金融機関にはあまり見られない特徴・メリットがあることから、「融資を受けるのが難しい」と悩んでいる事業者にも利用がおすすめできます。ここではそのメリットについて解説をしています。

日本政策金融公庫の概要

「日本政策金融公庫」は株式会社であり行政とは異なりますが、政府による出資が100%を占めているため「政府系の金融機関」と表現されることもあります。

同公庫が設立された背景も“経済の発展”や“国民生活の安定”にあり、事業内容も次の3つから構成されています。

業務種別 業務内容
国民生活事業 国民一般向けの事業
・小口の融資
・創業支援やソーシャルビジネス支援
・教育資金の貸付 など
農林水産事業 農林水産向けの事業
・農林水産業の担い手を育てるための融資
・加工流通分野に向けた融資
・コンサルティングなどによる支援 など
中小企業事業 中小企業向けの事業
・新規事業や事業再生に向けた支援
・長期事業のための融資
・経営課題解決に向けたサポート など

最大のメリットは「資金調達のしやすさ」

日本政策金融公庫の展開する事業を活用することのメリットは、ざっくり言うと「資金調達がしやすい」という点にあります。

同公庫の融資に次の特徴があることがその理由です。

  • 創業融資を成功させやすい
  • 担保や保証人なしで融資を受けることもできる
  • 返済条件が比較的優しい

創業融資を成功させやすい

融資は日本全国さまざまな金融機関で行われています。それぞれに融資条件や審査の厳しさは異なりますが、審査では基本的には借主の返済能力やこれまでの実績などが評価されます。

すでに長く事業活動を続けており売上・利益を出し続けてきた事業者であれば融資も利用しやすいですが、創業段階でまだ十分な実績を積めていない事業者はなかなか審査のときに信用を得るのが難しいという実情があります。

しかし、同公庫であれば創業間もない事業者でも比較的融資が利用しやすいです。審査の基準はどの金融機関も開示していないため、審査の通りやすさの程度を具体的に示すことはできませんが、同公庫が創業に取り組む人や小規模事業者向けの資金調達に力を入れていることは確かです。

担保や保証人なしで融資を受けることもできる

融資による資金調達で問題になりやすいポイントの1つが「担保や保証人が必要になる」という点です。

民間の金融機関でも必須とは限りませんが、十分な実績がない場合など返済能力に不安があると思われるような場面だと、担保や保証人を求められることがあります。これは経営者にとって大きなリスクであり、心理的に、攻めた経営戦略も立てづらくなってしまいます。

また、事業が上手くいかなかったときに法人が破産するだけでなく、代表者個人も自己破産に追い込まれるケースがあります。

近年はこうした問題を是正するための動きも見られますが、同公庫であれば担保や保証人なく受けられる仕組みも用意されており、経営者も安心して資金調達を進めやすくなっています。

返済条件が比較的優しい

貸主としては、融資に際して利益が発生しないとやる意味がありません。そこで金利が設定され、元本に対応して返済すべき金額が一定割合上乗せされます。他にも、返済期間や据置期間(返済開始までの猶予期間)などの返済条件が初めに定められます。

この条件に関しても同公庫は比較的優しく、民間の金融機関より「低い金利を設定してもらいやすい」「返済期間や据置期間を長く設定してもらいやすい」などのメリットを持ちます。返済期間に関しては長く定めることでかえって総返済額が増えることもありますので注意が必要ですが、適切に条件を定めることで、資金繰りの負担を軽減しつつ融資を受けることもできるでしょう。

新創業融資制度でさらに条件緩和

日本政策金融公庫ではさまざまな融資制度が用意されており、創業段階あるいは創業から間もない事業者の場合、そこに併用する形で「新創業融資制度」を活用するとより融資条件を緩和することができます。

新創業融資制度の大きな利点は、原則として「無担保」かつ「無保証人」であることです。また、一般的には必要資金のうち30%ほどは自己資金が必要とされるところ、同制度においては「自己資金割合10%」を確保していれば利用条件を1つ満たすことができます。

そのため創業段階の事業者は利用を検討してみると良いでしょう。なお、融資限度額のことなどいくつか条件や制約があるため注意が必要です。

《 新創業融資制度の注意点 》

  • 融資限度額は3,000万円(運転資金については1,500万円が限度)
  • 「新しく事業を立ち上げる方」または「事業の立ち上げから2期を終えていない方」でなければいけない
  • 実現可能性のある事業計画書を作成しないといけない

日本政策金融公庫の利用が向いている事業者

以上のメリット・特徴を踏まえると、日本政策金融公庫の利用が向いている事業者は以下のようにまとめることができるでしょう。

  • 起業をしたい方
  • 担保や保証人の用意が難しい事業者
  • 新規事業を始める事業者
  • 事業の拡大や生産性向上に向けた取り組みを始める事業者
  • 社会的な問題を解決するための事業を始める事業者
  • 社会情勢の影響で売上が大きく下がった事業者
  • 事業再建を目指す事業者 など

金融機関それぞれに特徴があり、良し悪し、向いている事業者・向いていない事業者、などには違いがあります。民間の金融機関からの資金調達が上手くいきそうにないときは、同公庫の事業内容もチェックしてみると良いでしょう。また、資金調達のサポートに取り組む専門家を活用すれば手続もよりスムーズになります。