後藤允良税理士事務所 > 税務に関する記事一覧 > 融資の手順と審査に通るために重要なポイント・条件について
事業者のする資金調達のうちよく採用されるのが「金融機関からの融資」です。融資とはつまり借金をするということであり、数年・十数年程度で返済することを条件にお金を貸してもらいます。利息もつけて返済するため金融機関にもメリットがあるのですが、それは約束通りに返済できることが前提ですので、返済能力について信用がなければ融資をしてもらえません。
大きな金額をやり取りすることも多いため手続は厳格で、審査も要します。具体的にどのような流れで手続が進行するのか、そして審査にクリアするにはどのような条件を満たさないといけないのか、融資を検討中の事業者に向けて当記事で解説します。
融資の手順は、①申し込み、②審査、③契約成立・融資実行、の大きく3つに分けられます。
必要書類、申込可能な金額や返済方法のこと、借入期間のことなど、申し込みを行う前にいくつか確認しておくべき事項があります。金融機関にアポを取り、まずは相談をしましょう。
そして融資の申し込みをするため、必要書類を準備していきます。必要書類は金融機関によって異なりますが、一般的には次の資料を用意することが多いです。
また、設備資金が必要な場合は当該設備に係る見積書や契約書も準備します。不動産を担保に提供する場合は当該物件の登記事項証明書や公図などを準備するなど、状況に応じて必要な資料も変わってきます。
申し込みの後、事業計画のことや返済のことなどについて質問を受けることが多いです。審査に入る前にこの面談が行われるのが一般的ですので、細かな点まで上手く答えられるよう備えておきましょう。
金融機関は、面談や提出書類から得られた情報をもとに審査を始めます。
なお、審査の内容・基準は金融機関によって異なり、また公開もされていません。そして審査期間が1ヶ月に及ぶこともありますので、資金繰りの観点から期間には余裕をもって申し込みや準備を始めておくべきといえます。
審査に無事通れば、契約締結に進みます。契約書の内容をよく確認し、問題がなければサインをします。これによって融資の契約が成立。その後金融機関が所定の口座へ入金をしてくれます。
融資により資金調達を成功させるには、審査への通過が欠かせません。そして審査で重視されるのは、申込をした事業者の「返済能力」です。
また、さまざまな事情を考慮して融資に伴う「リスク」の程度も評価されます。
例えば暴力団のような反社会的勢力との関係性が疑われる場合、返済能力があったとしてもそのような事業者と取引を行うことは金融機関にとってリスクが大きいといえます。
逆に、安定した利益が出せていなくても資産価値の高い土地が担保されていれば万が一返済が滞っても担保物件から債権を回収することができます。この場合、金融機関にとっては比較的リスクが小さいといえます。連帯保証人が付いている場合も同様です。
このような観点を踏まえて事業者は融資対策を講ずることが大事です。
融資を申し込むときは事業計画書を提出するのが一般的です。
事業計画書からは、当該事業者が取り組んでいる活動内容やこれからの方針、売上高や経費、利益の大きさと今後の見込みなどが読み取れます。返済能力を評価するうえで重要な判断材料として機能するのです。
ただ、「返済能力があることをアピールできない事業計画書だと審査に通るのは難しい」と言い換えることもできます。
そこで、返済が続けられる計画内容とすることはもちろん、客観的に見て「確かにその計画は実現できそうだ」と思わせるだけの説得力を持たせないといけません。作成者の希望的観測、主観による事業計画だと実現可能性が乏しいと評価されても仕方ありません。そのため売上高や利益の大きさについては根拠ある数字を記載することが大事です。
実績の有無も審査に響きます。
まったく同じ内容の事業計画書でも、実績のない事業者とすでに長く経営を続けている事業者とでは信用力に差が出てしまいます。やはり実際に利益を出してきたという実績や、過去の融資について完済をしたという実績などを持っていた方が有利です。
とはいえ創業融資の段階だと実績がないのが通常です。この時点で大きな額を融資で調達するのは難しいと思われますので、「運転資金について融資をしてもらって一度返済実績を作り、その後設備資金として大きな額を申請する」という手も検討すると良いかもしれません。
実績が乏しい場合でも担保の提供や保証人を立てることで融資の成功率を上げることができます。
担保としてよく提供されるのは不動産です。不動産に抵当権を設定することで、約束通りの履行ができなかったとき金融機関は担保物件を処分することができ、そこから発生する金銭を債権に充てることができるのです。
ただし安易に担保に供するべきではありません。事業計画が上手くいかなかった場合のことも想定し、本当に処分されてしまったときのリスクも考えておきましょう。
なお、提供できる高価な資産がない場合でも、信用保証協会による保証を付けることで借りやすくする方法があります。ただし保証付き融資だと融資金額が制限されたり保証料の負担が発生したりしますので、必要な資金の額や今後の経済面も考慮して利用を検討しましょう。