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融資を成功させる事業計画書~作成するときの3つのポイント~

融資目的で事業計画書を作成するときは、次の3つのポイントを意識してください。

➀ 資金が必要である説得的な理由の提示
② 綿密な返済計画の策定
③ 返済が難しくなった場合への備え

これらは金融機関が審査において特に注目する点です。どのように計画書を作成するのか、具体的な内容をここで説明していますのでぜひ参考にしてください。

資金が必要である説得的な理由の提示

資金が必要な理由については、事業計画書においても核となる大事な部分です。

金融機関もリスクを負って融資を行いますので、「なぜこの事業にこれだけの資金が必要なのか」「融資によってどのような効果が期待できるのか」については把握しようとします。そのため提出する事業計画書からその理由が読み取れないといけません。

そのうえで、理由の提示の仕方に工夫が必要です。大きく①設備資金と②運転資金に分けて書き方のポイントを見ていきましょう。

設備資金の場合

生産のための工場や機械、店舗、事務所などの設備にかかる資金に関しては以下を意識して必要な理由を示すことが大事です。

  • 具体性と導入の目的
    → どんな設備を導入し、それが事業に対しどのように貢献するのかを具体的に示す。「最新技術を搭載した〇〇を導入し、生産能力を〇〇%向上させるとともに年間〇〇万円のコスト削減を目指す。」などと数値目標を盛り込むことで設備投資の必要性と効果が明確に示せる。
  • 優位性が強化されること
    → 設備投資が競合他社との関係においてどのような優位性を築くのかを具体的に示す。「最新技術が導入されることで、他社製品より高品質な製品を短期間で納品できるようになる。」など。
  • 収益が拡大すること
    → 設備投資が将来の収益拡大にどのように貢献するのかを示す。「生産能力を向上させ、売上高を〇〇%増加させる。」などと具体的な数値目標を提示すると投資効果をアピールできる。

運転資金の場合

人件費や広告宣伝費、仕入費など、運転資金にもさまざまな種類があります。設備資金同様、具体的にどのような運転資金が必要なのか、いくら必要なのかを具体的に示しましょう。また、「増産に対応するために人件費がかかる。」「新規顧客獲得に向けた広告宣伝費。」など、資金需要も明確に示します。

「資金繰りが安定することで季節変動による資金不足にも対処できる。」など、運転資金の調達が事業継続性の向上につながることもアピールできるとより良いです。

綿密な返済計画の策定

融資を受けた後は継続的に返済をしていかないといけません。この返済計画が具体的に示されていない、あるいは実現可能性が低いと判断された場合、審査に通るのは難しいでしょう。

ここで特に大事になってくるのが「今後の売上・利益の予測」と「余裕のある返済スケジュール」です。

今後の売上・利益の予測が大事

「約束通りに返済ができます。」とアピールするためには、返済原資を確保しないといけません。

事業者がこれを確保するには利益を出す必要がありますので、事業から生み出される売上や利益の大きさを予測するところから始めましょう。当然、その内容には根拠が必要で、単なる予想・希望的観測ではアピールにはなりません。

その観点からは例えば、市場調査の結果、競合分析、過去の販売実績など、客観的なデータの提示が効果的といえます。

ただ、まだ事業を始めていない創業段階の場合は予測も難しいでしょう。そのような状況で1円単位の細かな数字を提示してもあまり意味はありませんので、いくつかのシミュレーション結果に基づき実現可能性が高いと思われる金額の“幅”を提示することを意識しましょう。

返済スケジュールには余裕が必要

返済スケジュールは、無理のない範囲で余裕を持って策定することが大事です。

売上や収益が計画より多少下振れしても問題なく返済できるような期間を見込んでおくことで、金融機関の安心感を高めることができます。

返済が難しくなった場合への備え

計画通りにいかないことも珍しくありません。予想外の大きな出来事に返済が難しくなってしまうことも起こり得ますので、そのような“万が一の事態”も想定した備えをしておくことが望ましいです。

起こり得るリスクとは

景気変動や競合の出現、製品・サービスの陳腐化など、さまざまな要因で売上が低迷する可能性があります。ほかにも次のようなリスクがあることは知っておきましょう。

  • コストの増大
    → 物価の高騰、人件費の上昇、為替変動などによりコストが急激に増大する可能性もある。コスト増が収益を圧迫する場合の対策についても検討しておくべき。
  • 自然災害・事故
    → 地震や洪水、火災等の災害などが事業に与えるリスクについても考慮すべき。事業継続計画(BCP)を策定して、災害発生時のアクションを具体的に備えておくことが大事。
  • 訴訟リスク
    → 知的財産権の侵害、製品欠陥、取引トラブルなどにより訴訟に発展するリスクも考慮する。訴訟対応費用や賠償金などが資金繰りに大きな影響を与えることもある。

複数のシナリオと対策を準備しておく

上記のようなさまざまなリスクと隣り合わせで事業を継続していくことになりますが、予測が困難な事象も多いです。

そこでいろんなパターンに対応できるよう、例えば次のような対応策を備えておくことが融資においても有利にはたらきます。

  • 資産の売却
    → 不動産や株式、設備など、保有資産を売却して資金を確保する方法もある。売却可能な資産とその見込み価格を明らかにしておくと良い。
  • 担保・保証
    → 担保や保証人を提供できれば、融資においてとても有利になる。ただし担保を供する方、保証人となる方が大きなリスクを負うことになるため要注意。
  • 事業再編
    → 事業の一部を縮小・撤退するなど、事業再編によってリスクを軽減する選択肢もある。万が一の場合の再編計画を提示することができれば、事業継続への強い意志を示せる。

少しでも予想外の範囲を狭めるために、複数のシナリオを用意しておきましょう。いろんなパターンを持っておくことで臨機応変に動くことができるようになりますし、事業計画書からその姿勢が読み取れると金融機関に好印象を与えることもできるでしょう。