後藤允良税理士事務所 > 税務に関する記事一覧 > 顧問税理士を選ぶときに着目すべきポイントを紹介
税のプロである税理士と顧問契約を結ぶことで、企業に求められる税務を的確にこなすことができるようになり、その作業効率も向上します。適切な節税対策も取りやすくなりますし、経営に関する意思決定の精度向上も期待できます。
ただし依頼する税理士の能力や自社との相性によってその効果にも差が出てきます。企業の方が顧問税理士を探すときに着目すると良いポイントがいくつかありますので、当記事ではその着眼点を紹介していきます。
顧問契約は長く付き合うことを前提としていますので、単発で税理士を利用する場面に比べて慎重な検討を進めることが大事です。
そこで税理士探しにおいて次に挙げる点はチェックしておきましょう。
各チェックポイントについて詳しく説明していきます。
専門家を利用するとき、その方の能力の高さや実績なども評価すべきですが、「丁寧な対応をしてくれるかどうか」「自社の風土や担当との相性の良さ」も非常に重要です。
優秀な方であっても気持ちの良いコミュニケーションが取れない、高圧的な態度で物言いをされる、といった場合には長く良好な関係性を築くのは難しくなってしまいます。
ビジネスパートナーとして長く付き合うには人としての良さ、相性が良くなければなりません。また、親身になって相談にのってくれる税理士だと自社の問題点もよく把握してもらえます。その結果、アドバイスや提案内容の精度も高くなることが期待できます。
人としての良さや相性を見極めるためにも、正式に契約を交わす前に面談をしておくことが大事です。実際に話をしてみた印象も判断材料にして顧問契約の検討を進めましょう。
「対応の早さ」も重要なポイントです。
契約内容にもよりますが、顧問契約を交わした場合は日常的な税務の相談が可能となります。その際、レスポンスがあまりに遅いとせっかくの顧問税理士も最大限活かすことができません。
また、返信待ちの状態が続くと仕事が一時的にストップしてしまうなど、支障をきたすおそれもあります。そこで、事前相談の段階から対応の円滑さにも意識して着目しておくことをおすすめします。
現在顧問税理士がいる場合でも変更は可能です。「返答の遅さに困っている」「試算表等の提出が毎月遅くて財務戦略に悪影響が出ている」などの現状がある場合は別の税理士に依頼することも検討すると良いでしょう。
自社の採用するITツールやシステム環境にもよりますが、クラウドサービスやITツールに対応している顧問税理士である方が良いです。
後々クラウド会計サービス等の導入をしたいと考えたときでも顧問税理士が対応できないという状態では大変です。優秀なサービス、ツールを利用すれば作業効率は向上し、システム上での連携により税務以外の業務にも好影響が及びます。
また、会計・税務以外のツールについても積極的に利用している税理士であれば、普段のやり取りからチャットやオンライン会議システムなどを使用し、スムーズなコミュニケーションが期待できます。
そのためクラウド会計サービスの導入、運用についてのサポートも対応可能かどうかといった点も確認しておきましょう。
税理士との契約における一番の心配が「費用」ではないでしょうか。
顧問料として支払う費用は依頼先により異なります。そこでまずは相場から逸脱していないかどうかを確認する必要があります。
ただ、相場との差について判断をするのは容易ではありません。なぜなら依頼内容によって金額は変わりますし、企業規模によっても顧問税理士の仕事量が変わるためそれに応じて適切な報酬額は異なります。
そこで①企業の売上と②依頼する仕事内容、の2点から費用について評価すると良いです。
基本報酬の目安(月額)としては、最低でも1万円以上、売上規模が億単位になってくると5万円以上かかってきます。また、税理士が直接訪問する頻度や税理士に報告を求める頻度なども顧問料を左右する要因で、数万円程度前後することがあるでしょう。
記帳代行も依頼をするなら月額5,000円や1万円以上は追加になるケースが多いです。決算料についても年額で10万円以上はかかってきます。売上規模に応じて20万円以上かかるケースもあります。
月額の基本料だけでなく、年間で支払うトータルの費用を見なければ依頼先候補の比較はできません。そこで料金体系について詳しく聞いておくようにしましょう。
当然ともいえますが、「対応可能な業務範囲」についても確認しておくべきです。
特に将来、事業承継やIPO、M&Aなどを想定しているときは、事業や企業の売却などもサポートしてくれるのかどうか、チェックしておきましょう。
まだまだ目標達成までに時間がかかりそうだと思われる場合でも、始めからIPO、M&Aなどに対応した税理士が付いていた方が良いです。ゴールを目指す上で必要な知識やアドバイスをしてくれます。
その他にも、資金繰り、資金調達のこと、補助金や助成金のことなど、自社が今後必要になると思われる事についてサポートしてもらえるのか、あらかじめ把握しておきましょう。
そのためにも「何をしてほしいのか」を明確化しておきます。自社が現状困っていること、税理士に求めることを振り返って整理してみましょう。
例えば経理専門の従業員がおらず、その他の従業員については本業に集中させたいという場合はできるだけ税理士に広く対応してもらう必要があります。となれば、「記帳代行」+「定期訪問による監査」+「決算申告」+「年末調整」などの依頼を出す必要があります。
逆にできるだけ自社で対応してコストを最低限に抑えたいと考えているのであれば、「記帳チェック」+「会計ソフトの導入サポート」+「決算申告」などの依頼にとどめておきます。ソフトの導入だけサポートしてもらい、その後は自社で運用。チェックをしてもらうことで正確性を担保し、決算申告を任せる、というプランが考えられます。
企業が質問したことへの回答、依頼範囲内での対応などが基本的な顧問税理士の仕事です。
しかし、税理士側から積極的に提案やアドバイスを受けることができれば、自社だけだと思いつかなかった戦略・対策などに取り組むことが可能になります。
現状、取引のある税理士に対して「最新の特例や優遇措置、助成金・補助金についての情報がもっと欲しい」「節税対策、経理改善についてなど、積極的な提案が欲しい」といった不満があるのなら、別の税理士を探すことも検討してみましょう。
税理士の積極的な姿勢、一緒に企業をより良くしていこうという気持ちの有無などにも意識して着目してみましょう。数値で判断できるものではありませんので見極めが難しいですが、コミュニケーションを多く取ることで判断がしやすくなるでしょう。
以上に挙げたポイントを押さえて税理士探しに取り組むことで顧問契約を締結することのメリットをより大きくすることができます。
例えば次のようなメリットです。
自社について深く理解してくれることでアドバイスの最適化が図られる。
税務調査では過去の資料なども調査対象となるため、税務調査に対応する税理士にも企業に関する歴史、情報を多く備えていることが求められる。よく知った企業であるほど対策も取りやすくなる。
財務分析を通して企業の経営状態を深く把握してもらうことができ、事業計画の策定、資金繰りの管理、事業承継への対策など経営に関わるさまざまなアドバイスが期待できる。
企業は税務をおろそかにすることができませんし、申告等の法的な義務も果たさなければなりません。また、継続的安定的な企業活動のためには余計な支出は抑える必要があり、適切なお金の使い方・集め方を知ること、節税方法についても知ることが大事といえます。
この観点から、自社と良い関係性が築ける税理士の存在が特に重要といえますので、顧問税理士は上記ポイントを踏まえてしっかりと見定める必要があります。