後藤允良税理士事務所 > 税務に関する記事一覧 > 年末調整の対象者・対象外となる人とは? 会社員でも対象にならない人など具体例から説明
年末調整とは、「給与から差し引いた源泉徴収税」と「本来納めるべき所得税」との差額の精算を行うための手続です。
正しく納税義務を果たすために必要な手続であり、企業の方や従業員として雇われている方は年末調整について少しでも知識を持っておくことが望ましいです。
ただしあらゆる人が年末調整を必要とするわけではなく、対象者・対象外となる人に分かれます。当記事でこの違いを説明します。
まずは年末調整の対象となる人について説明していきますが、こちらは「12月に行う年末調整が必要な人」と「年の中途で行う年末調整が必要な人」の2つに分けることができます。それぞれを解説していきます。
12月の年末調整の対象となるかどうかは、次のポイントに着目すると判断しやすいです。
①従業員として会社で勤めているかどうか
②年末時点で従業員として在籍しているかどうか
③給与所得者の扶養控除等(異動)申告書を提出しているかどうか
<①について>
年末調整は、従業員を雇用して給与を支払う会社が行う手続きです。そのため、対象となるのは基本的に会社等に雇用されている人です。このときの雇用形態は関係ありません。正社員のみならず、契約社員やアルバイト、パートなども対象となり得ます。
※派遣社員に関しては“派遣先”で年末調整を行うのではなく、“派遣元”において年末調整の対象となる。
<②について>
12月の年末調整の対象となるのは、給与の支払いを受けている従業員の中でも「年末時点で在籍している人」です。年末時点で在籍していない人、つまり年の途中で退職した人などについては12月の年末調整の対象になりません。
<③について>
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書とは、配偶者の有無や所得、扶養家族の人数など、各家庭の状況を記載した書類です。ある年の最初の給与の支払いを受ける前日までに会社に提出しなければなりません。一般的には、入社時の提出書類の中に含まれています。
会社等はこの書類を基に、配偶者控除・扶養控除などの各種控除を適用できるよう手続きを行いますので、年末調整をするために必要不可欠の書類です。逆に、この書類がなければ会社は年末調整の手続きができません。
配偶者控除や扶養控除などの控除を受けない従業員でも、提出が必要です。配偶者や扶養家族がいない場合は、それに関わる控除がないことを会社等が確認する必要があるため、控除対象外の人も提出する必要があります。
なお、これら①②③を満たす場合でも、後述する「年末調整の対象とならない人」のどれかに当てはまれば年末調整の対象からは外れます。そのため対象外の人の特徴もしっかりと押さえておく必要があります。
続いて「年の途中で行う年末調整」の対象となる人について見ていきましょう。
この年末調整の対象となるのは、次のいずれかに該当する場合です。
※退職後、再就職をして給与を受ける見込みのある人は除く。
※退職後、他の勤務先から給与を受ける見込みのある人は除く。
例えば海外支店への転勤で非居住者となった場合、非居住者となった時点で年末調整を行うことになります。
年末調整の対象にならない人もいます。例えば次のような人です。
それぞれ詳しく説明します。
上述の通り、一部の場合を除いて、年の途中で退職した人に関しては基本的に年末調整の必要がありません。退職後、その年の年末時点で他の会社に就職しているのであれば、その転職先にて年末調整を行うことになるからです。
そこで年末調整が不要となった企業側としても、退職した方にその年分の給料を集計した「源泉徴収票」を交付する対応が求められます。その源泉徴収票の記載内容を参考に、年末調整あるいは確定申告を行うことになるからです。
従業員として働いている場合でも、給与の総額が2,000万円を上回るのであれば、年末調整の対象から外れます。2,000万円を超える給与を受けている方は、自分で確定申告をしなければなりません。
年収2,000万円ということは、概算で月当たり150万円ほどの給料を受け取っていることになります。従業員としてこのような額をもらっているケースはレアですが、従業員として勤め続けていても確定申告が必要な可能性があることは知っておくと良いでしょう。
ある方に関する年末調整は1つの勤め先からしか行うことができません。そこで複数の会社に勤めている方に関しては複雑な処理を要します。
例えば会社Aで主に勤め、会社Bで副業を行っているとします。
このとき、会社Aでのみ年末調整を行い年末調整済みの源泉徴収票を受け取り、会社Bでは年間給与を集計した年末調整をしていない源泉徴収票を受け取ります。そしてこれらをもって確定申告を行うことになります。
年末調整を受けるためには、上述の通り、勤めている会社へ給与所得者の扶養控除等(異動)申告書を出さないといけません。雇用形態に関わらず提出する必要があり、もしこれを提出しなかったときは年末調整を行うことができません。この申告書の内容に応じて源泉徴収額が定まりますし、企業としても、申告書の提出をしなかった従業員に対して年末調整を行う義務はありません。
近年は副業も一般的になりつつあり、複数の会社に勤める、あるいは勤務時間外は個人事業主として働く、などの選択肢も珍しくなくなっています。状況が複雑で年末調整の処理に関する疑問点や不安があるという場合は、一度税理士に相談すると良いです。どのような対応が必要か、プロの視点から的確な助言をしてくれるでしょう。