後藤允良税理士事務所 > 税務に関する記事一覧 > 株式会社と合同会社の違いとは?設立費用や機関、役員の任期などを比較
会社形態としてもっともメジャーなのは「株式会社」です。設立数も多く、一般にも広く知られていると言えます。
他方で、「合同会社」も近年設立数を伸ばしている会社形態です。徐々に知名度も増してきています。
そこで会社を設立する際、株式会社にしようかそれとも合同会社にしようか、と悩むこともあるでしょう。この記事でそれぞれの違いを整理していきますので、参考にしていただければと思います。
潤沢な資金を備えていないのであれば、会社を設立するための費用が気になるところかと思います。
昔と違って、資本金の額に下限はありませんので比較的設立をしやすくなったと言えますが、1人会社としての設立・スモールビジネスの立ち上げといったケースでは数万円を大きな差と感じることもあるでしょう。
結論から言うと、株式会社のほうがやや設立費用は高くなります。
その理由としては大きく2つ、①定款の認証の必要性、②設立登記に要する登録免許税、が挙げられます。
どちらの会社形態であっても定款自体が必要である点違いはありません。しかし株式会社の場合には公証役場にて認証手続を経なければなりません。そしてその手続に際して、公証人に対し手数料を支払わなければならないのです。
ただ、近年この手数料につき改定がなされており、株式会社における負担が小さくなっています。かつて手数料は「5万円」と設定されていたのですが、執筆時点(2022年6月時点)では以下のように設定されています。
※2022年4年1月1日からこの手数料額が適用されている
こちらも参照してみると良いでしょう。
https://www.koshonin.gr.jp/business/b07_4/q07_4_03
また、会社は各種手続を済ませ、最後に設立登記をしなければなりません。これをもって会社成立となるからです。
ただ、ここでも費用が発生します。資本金の額に応じた登録免許税を支払わなければなりません。株式会社も合同会社も資本金の額に0.7%を乗じた額であるため同額になるケースが多いのですが、「株式会社では最低額15万円」「合同会社では最低額6万円」と差が出ることもあります。
株式会社では会社の所有者と経営者が分離しています。小規模の会社であれば一致することもありますが、株式会社ではこれが一致しないことも想定されています。株式が公開されていると経営に直接携わらない社員(株主)が増えてきますが、これを許すことでより資金調達を容易にすることができ、ビジネスの拡大が狙いやすくなっているのです。
これに対し合同会社では所有と経営が一致しています。経営者を社員以外から選任することはできません。そのため会社全体の一体感は増しますが、結果として、広く資金調達を行うことは難しくなります。
株式会社の場合、社員が会社を代表するわけではありません。各取締役が会社を代表します。
※代表取締役を定めることもできる
これに対し合同会社では前項の通り所有と経営が一致しており、各社員がその会社の経営者でもあり、代表にもなります。
※代表社員を定めることもできる
株式会社の経営者である取締役は、任期が原則として「2年」と法律で定められています。あくまで取締役は会社から委任されて経営という仕事をしている人物なのであり、会社の所有者ではないからです。期間を限定して会社の経営権を持たせることにより強い支配力がいつまでも維持できないようにしているのです。
ただし株式の譲渡制限を定款で設けている場合には「10年」まで任期を伸ばすことが認められています。また、監査役に関しては取締役の見張り役として働くことになるため、取締役よりも長い「4年」が原則の任期とされています(株式の譲渡制限があるなら「10年」まで伸長可能)。
他方、合同会社では所有と経営が一致している関係から、経営者である社員に任期もありません。
株式会社には公告の義務があります。株主や債権者などの利害関係者に対しお知らせをするための手続です。
決算に関しても毎年行う必要があります。
これに対し合同会社では公告が不要です。定款に定めることも可能ですが、定めなくても何ら問題はありません。
社会的なイメージ・信用度については、ルール・制度的な違いではありませんが、無視することができない要素です。
会社として事業を行っていくためには取引の相手方からある程度信用を得ていなければならないからです。信用がされていないと、たとえ優れたサービスや品物が提供できるとしても、取引ができず利益を出すことができません。
株式会社・合同会社の違いだけで大きな差がつくわけではありませんが、特に一般消費者からすると聞きなれない社名に対し警戒心を持つ可能性があります。株式会社なら聞き馴染みがある一方、合同会社だと知名度という点でやや劣ってしまいます。
最近では合同会社という名称も周知されてきましたが、自社サービス等の内容を鑑みて検討する必要があるでしょう。
細かなルールの違いはいろいろありますが、大雑把に言うと「家族経営などで、スモールビジネスを始める場合に適しているのが合同会社」「多くの資金を集めて大きな規模に事業を展開するのに適しているのが株式会社」と言えるでしょう。
合同会社なら少ない費用で設立ができ、経営も比較的自由に行うことができます。
これに対し株式会社は経営者に法令上の制約がかけられ、厳格なルールの下運営をしていく必要があります。株主との関係にも配慮しなければなりません。しかし広く投資を受けることができ、大きな資金力を得やすいという良さも持っているのです。